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【中本裕己 エンタなう】原作を知っていても涙を誘う 漫才コンビの青春映画「火花」

 又吉直樹原作の芥川賞受賞作を同じ漫才師の板尾創路監督が映画化した「火花」(公開中)。2人のお笑い芸人の10年間を舞台袖から追い、夢破れた後輩をいとおしむような目線で映した胸に迫る青春群像劇だ。

 主演の菅田将暉と桐谷健太はテンポいい大阪弁と芸歴、年齢差がそのまま投影され絶妙の配役。伸び悩んでいた若手コンビの徳永(菅田)は営業先の熱海の花火大会で、先輩芸人・神谷(桐谷)と出会う。型破りな芸風と人間味に惚れ、弟子入りを願い出ると、了承する代わりに「俺の伝記を作って」と頼まれる。

 2年後、神谷のコンビは大阪から東京に拠点を移し、2人は再会。井の頭公園、吉祥寺のハーモニカ横丁…飲み歩きながらも、会話にはボケとツッコミを忘れない。

 「笑われたらアカン、笑わさなアカンってすごく格好いい言葉やけど、あれ、楽屋から漏れたらアカン言葉やったな」

 理論は立派でも、ヒモ同然の神谷の生活はやがて破綻、徳永に先を越される。夢と現実は違う。折り合いをつけ、やりたい芸ができない徳永をいさめる神谷に、徳永が泣きながら、「自分がテレビ出てやったらよろしやん」と突き放す場面が実に切ない。

 その徳永も、10年で芸人に見切りを付けるのだが、最後に放つ漫才は、原作でストーリーを知っていても涙を誘う。

 つい先日の「M-1グランプリ」でも勝者と敗者の容赦ない人間模様が生放送で大写しになった。もはや、お笑いはネタだけ楽しむ時代ではないのかもしれない。 (中本裕己)

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