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【中本裕己 エンタなう】殺人被害者の母と警察の愛憎が予想外の結末を迎える映画「スリー・ビルボード」

 各国の映画祭で高い評価を得ている映画「スリー・ビルボード」(公開中)は、ずっしり見応えがあった。舞台は米ミズーリ州の片田舎。女手ひとつで育てた年頃の娘が、レイプされた末に殺され、怒り心頭の母親が、捜査が進まないことを訴える3枚の広告看板を田舎道に掲げる。警察署長の実名まで出して…。ところが、署長は人望が厚く、物語は「事件の被害者VS隠蔽警察」といったステレオタイプのサスペンスとは、まったく異なる展開を見せる。

 住民らの嫌がらせに、一歩も引かず攻撃的な母親ミルドレッドを演じるフランシス・マクドーマンドの演技がとにかく熱い。背後に西部劇風の音楽が流れる。責められる一方の署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)のバックには、神聖な響きの調べ。そして、署長を慕うあまり暴力的な態度に出る不良警官ディクソン(サム・ロックウェル)が、ひとりヘッドホンで聴くのが、なぜかアバの「チキチータ」。

 映画の中心となる3人の音楽には意味がある。小さな町でそれぞれの思いは怒りと毒をはらみながら、こちらの想像をことごとく超えてゆく。人間ひとりひとりの中に潜む善人と悪人を深いところまで掘り下げ、少しだけ救いの兆しが見えるエンディングだ。

 監督のマーティン・マクドナーは、アイルランド出身の劇作家で、北野武映画のファン。暴力にシニカルな笑いをまぶしながら先の読めない脚本に唸った。アカデミー賞の有力候補でもある。(中本裕己)

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