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タレントの薬物問題に、企業はどう対応すべきか (3/5ページ)

 という話をすると、「さっきから“なっていく”とか言っちゃってるけど、本当にそうなっていくのか」と首をかしげる方も多いだろう。今の日本では、薬でも暴力でも不倫でも「不祥事タレント」が関わるものはすべて「自粛」という暗黙のルールがあるではないか、と。

 確かに今はそうである。しかし、これは常識でもなんでもない。その証に、かつてはそうではなかったのだ。

 ショーケンこと萩原健一さんをはじめ、大麻で逮捕された芸能人は山ほどいるが、作品や曲がお蔵入りになることなどほとんどなかった。1987年に覚せい剤で逮捕された尾崎豊さんのときもレコードの回収などされず、しばらくして音楽活動を続けている。

 薬物だけではない。例えば、日本中の子どもをとりこにした『8時だョ!全員集合』で人気絶頂のドリフターズでは81年、メンバー2名が競馬ノミ行為で書類送検された。今なら子どもたちに悪影響だと番組は中止になるだろうが、普通に2名が休んで続けられた。

 80年代までは、タレント個人の不祥事と作品は完全に切り分けられていたのだ。

 ◆90年代に「何か」があった

 では、いつから変わったのか。尾崎逮捕から12年後の99年、槇原敬之さんが覚せい剤所持容疑で逮捕されたときは、今のような自主回収が行われている。ということは、90年代に「何か」があったということである。

 それは、タレントの罪を「作品」にまで波及させるのが当たり前となるような、衝撃的な事件である。と言うと、勘のいい方はもうお気づきだろう。勝新太郎さんの「パンツ事件」だ。

 90年1月、ハワイの空港で勝さんは下着の中にマリファナとコカインを入れて現行犯逮捕された。後に会見で「もうパンツは履かない」という迷言を残したことはあまりに有名だが、日本の企業危機管理の常識を変えたことはあまり知られていない。

 実はこの事件によって、わずか1日のオンエアで消えたCMがある。キリンビールの「ラ党の人々。」である。これは新商品「キリンラガービール」を売り出すため、まさにキリンの社運をかけた一大キャンペーンだった。

 タレント逮捕でCMお蔵入りというのは、この時代でも決して珍しい話ではなかったが、この「ラ党の人々。」が世間にインパクトを与えたのは、これがただのCMではなかったからだ。つかこうへいさんが演出し、松坂慶子さんや国広富之さんなどそうそうたる実力派俳優をそろえて、1年間かけて放映されるCMドラマだったのだ。

 今でこそこの手のドラマ仕立てのCMはさして珍しくないが、当時はかなり斬新で、世間の注目度も高かった。そんな莫大な費用をかけた「話題のドラマ」が、主演俳優の逮捕でわずか1日の放映で打ち切りになる。こうなると、「タレント個人の不祥事と作品は別」なんて寛容なことは言ってられない。事実、その後に勝さんはCM制作会社から損害賠償請求され、そちらも大きなニュースとなっている。

ITmedia ビジネスオンライン

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