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タレントの薬物問題に、企業はどう対応すべきか (5/5ページ)

 以上のことから、当社では瀧さんの出演作品を公開します。自粛することは、瀧さんに刑事罰以上の社会的制裁を与えることとなり結果、瀧さんの更正と社会復帰を妨げるようなことになってしまうからです。瀧さんの出演に不快になられる方もおられると思いますが、そのような方はどうかこの作品ご覧にならないようお願いいたします」

 もちろん、こういう時代なので「不謹慎だ!」「犯罪者の作品を出し続けるなんて反社会的だ!」など、クレームを入れる人は一定数いるだろう。しかし、そこに、企業としての「信念」があれば、賛同をしてくれる人は少なくないはずだ。

 むしろ、世間から叩かれるのが怖くて、右へならえで「自粛」へ走るような企業は、「薬物依存への理解がない」「不寛容」などと批判されるような風潮もできてくるだろう。

 薬物依存は「クサイものにフタ」で社会から排除するのではなく、社会に居場所をつくったままで更正させるべき、という専門家や支援団体の主張が徐々に浸透しているからだ。

 ◆「寛容さ」という新しい危機管理対応

 「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」というあまりにも有名なキャッチフレーズがあるように、日本では薬物に手を出した時点で、自動的に「人権」が剥奪される。

 人権がないので、裁判前の容疑者段階であるにもかかわらず、「人民裁判」で吊し上げられる。もはや人間ではないので、それまで仕事をしていた企業からも石を投げられる。そんな「人でなし」が、どんなに素晴らしい映画に出ていようが、どんなに素晴らしい音楽をつくっていようが、許されるわけがない。だから、本人の権利を無視して、自主回収や公開・販売停止に抵抗なく踏み切ることができるのだ。

 このような「クサイものにフタ」が、問題をさらに悪化させることは、日本社会も薄々勘付いてきている。

 「バイトテロ」で巨額賠償金を求めても、外食チェーンが低賃金の非正規雇用に依存する限り、同じような問題は繰り返される。コンビニ店長にコワモテで圧力をかけても、「24時間営業」というシステムの維持はできない。個人を必要以上に叩いて、「見せしめ」のような懲罰を与える企業危機管理は、もはや通用しなくなってきているのだ。

 この構造的な問題に気付いて、「寛容さ」を打ち出した企業は、新しい危機管理対応を世に示したモデルケースとして高い評価を受けるだろう。影響力のある大企業が動けば、社会のムードは大きく変わる。危機管理担当者は今、こんなことを問われているのではないか。

 薬物依存患者を排除し続けますか、それとも社会復帰に手をさしのべますか--。

ITmedia ビジネスオンライン

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