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何度見ても幻惑されそうな映像美の塊 「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」24日公開

 この作品の「構想30年」は大げさではない。

 企画が立ち上がったのが1989年、平成元年だ。主役が降板したり資金がショートしたり、自然災害で撮影が続行できず脚本の権利が保険会社に移ったり…と頓挫が9回。苦難続きのプロジェクトはいつしか“映画史上最も呪われた企画”とのありがたくない称号をいただいてしまった。

 それが令和の今、24日に公開される映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」。第71回カンヌ国際映画祭のクロージングを飾り“熱狂的な賛否両論”を巻き起こした。

 ギリアム監督は英国のコメディー集団、モンティ・パイソンのメンバーとしてアニメーション制作を担当。70年代から映画を手掛けるようになり「未来世紀ブラジル」や「バロン」など刺激的な作品を作り続けてきた。

 “鬼才”“ハリウッドの異端児”と呼ばれる偏屈な作り手だが、世界中に熱狂的なファンを持つ。邦題が「テリー・ギリアムの~」とあるのがネームバリューの高さを物語る。

 CM監督の仕事にうんざりのトビー(アダム・ドライバー)が10年ほど前、卒業制作の映画撮影で訪れたスペインの村を再訪するところから、物語が大いに転がり出すのである。

 靴職人だった男(ジョナサン・プライス)は自分がドン・キホーテだと思い込み、妄想の世界でブレずに生きている。再会した2人は、現実か幻か境界のあいまいな世界を旅することになる。

 奇妙なバケモノ、呪術的な祝祭、言葉を変えればホラーとカーニバルの豪華絢爛な入り乱れ。血がある、死がある、裏切りも愛も罪悪も何もかもが迷宮へと観客を惑わせるおびただしい仕掛け。

 映画を見たからといって、映画を分かったことにはならない。初見で理解するなんてハードルが高すぎる。何度見ても、その都度に新しい仕掛けに幻惑されそうな映像美の塊。何度でも見たい。DVDになっても繰り返し見たい。

 テリー・ギリアムが製作をあきらめなかった作品を見られただけでも、かなわぬ夢を手にしたようなもの。正月からエネルギーをギンギンにチャージしてくれる作品だ。133分。

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