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【中本裕己 エンタなう】追悼・大林宣彦監督 中年男が主人公の映画「異人たちとの夏」を見ながらまた泣いた

 大林宣彦監督を偲ぶ追悼番組や作品の放送が相次いでいる。数ある名作の中でも、中年男の悲哀と郷愁にエロスまで加えた、怪談映画「異人たちとの夏」(1988年)は色褪せない。山田太一原作の同名小説を市川森一が脚色、大林がメガホンを取った豪華布陣の出色のファンタジーだ。

 40歳のシナリオ・ライター、原田(風間杜夫)は妻子と別れ、マンションに独り暮らし。ある日、幼い頃に住んでいた浅草に出かけ、偶然亡き両親を見かける。12歳のとき交通事故で死んだはずだが、当時のまま年を取っていなかった。一方、同じマンションに住む妖しい女、桂子(名取裕子)と愛し合うようになる。両親と合うたび、形相が変わる原田に桂子は「二度と会ってはいけない」と忠告するが…。

 異界への扉となるのが、浅草演芸ホール。マジシャンの北見マキ(本人)が操る昔懐かしいアイスクリームのカップ皿から客席前方に視線を移すと、父親(片岡鶴太郎)の後ろ姿。あっけにとられる間もなく、気っ風のいい寿司職人の父と、ちゃきちゃきの母親(秋吉久美子)が暮らす家に誘われる。

 ビールで乾杯し、花札のおいちょかぶで勝負。童心に返りながら、大人の遊びを教わる。やがて、今半ですき焼きを囲みながら、異人(幽霊)の両親と別れる場面は、何度見ても泣ける。

 名取の大胆なベッドシーン、秋吉の下着姿など大林作品では珍しい昭和エロスや、ぶっ飛んだラストも全てが愛おしい。(中本裕己)

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