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【ぴいぷる】松重豊“空洞のなかみ”には何が? コロナ禍で小説に挑戦「僕は“生涯一役者”ではない」 (1/4ページ)

 ◆そうだ、小説を書いてみよう

 世界中が未曾有の窮地に立たされた春4月、俳優は思わず、パンと膝を叩いた。

 そうだ、小説を書いてみよう。

 日ごろを綴るエッセイ「演者戯言(えんじゃのざれごと)」はすでに週刊誌に連載していた。それとは違う、無からペンを走らせる小説を書いてみたかった。

 「コロナというものに揺さぶられたら、俳優は何もできなくなってしまった。この先も含めてどうなるか分からない、もろい職業。でもこの職業で生きていくと決めたなら、今、何かをしなくちゃいけない。何ができるか動き始めていくうちにああ、書こうかと。書くことで、芝居をやっているときの精神のバランスを保っていたんです」

 12編からなる連作短編小説「愚者譫言(ぐしゃのうわごと)」を書きあげ、出版された初の著書「空洞のなかみ」は、前半は小説、後半は連載したエッセイがまとめられている。その小説、処女作とは思えないほど読みやすく、スルスルと迷うことなく文体が進む。秀逸なリズム感、これはいったい何なんだろう。

 「仲のいい若いミュージシャンの演奏で、自分の小説を朗読できたらいいな。ライブは厳しい情勢でもYouTubeならと、そんな目的もありました。だから書いたものを音読して、音の気持ちのいい日本語を意識しました。芝居の台詞でも“書かれた”ものは違和感があるけど、しゃべることを前提に書いた脚本家の言葉は台詞として気持ちが良く、中に入ってくる。冗長に語ることも気持ちのいい作業ではなかったので、淡々と削り込んで書きました」

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