【高須基仁 人たらしの極意】山本モナも絶賛、柳美里の“女子アナ暴露小説”

2009.10.29


「のりピー本」には望めない“真実”を描いた柳さんの筆力に脱帽!【拡大】

 芥川賞作家、柳美里さんの最新小説「オンエア」(講談社)が上・下巻に分け、全国発売された。

 これに先がけ、柳さんは9月末から数回にわたり、自作を論評してくれるであろう新聞、雑誌、テレビの記者ら数十人の取材に対して1人ずつ丁寧に答えていた。

 「オンエア」は、テレビ業界で華麗に活躍する女子アナウンサー3人を主人公に、業界の内幕を赤裸々にしたまさに“女子アナ暴露小説”だ。

 本の帯には、元朝日放送アナで、2度にわたる不倫スキャンダルで世間を騒がせたタレント、山本モナが「この小説で、女子アナに抱く皆さんの〈イメージ〉は壊れてしまうことでしょう。でも、そもそもそのイメージがおかしいんです」と書き、内容を絶賛した。

 事実、第1章の3人の女子アナの「ヰタセクスアリス」の描写は刺激的で、今ベストセラーになっている官能小説をしのぐほど。男女のエロスの究極を描き切っている。

 そして、最近のワイドショーが大騒ぎしている違法薬物の“実態”にもリアルに迫っている。

 私は日本一の柳美里作品の読み手であると自負している。柳さん本人とも1年半ほど前から親しくしているが、彼女の恋人だった劇作家、故東由多加氏と同年配ということもあり、「おやじの深情け」から、妙なシンパシーを覚え、敬愛する天才作家の新作PRに加担することにした。

 今月16日放送のBS11の報道番組「Inside Out」で、私は慣れないインタビュアーを務め、柳さんに辛苦を刻む創作活動の一部始終を語ってもらった。彼女の織りなす言葉の美しさに久しぶりに酔った。

 名作「命」を中心とした三部作が計100万部を超す販売実績があるというので、今回も初版はすごい数字だろうと思っていたが、講談社からの出版にもかかわらず、上下巻それぞれ2万部ずつ、合計4万部という。

 1年以上にわたる「週刊現代」の連載を精査して余分なところをそぎ落とし、苦しみ、若い編集者と二人三脚で壮絶な戦いを続け、その上、著者自らプロモーションもした、まさしくハンドメイドの作品であるというのに、たったの4万部…。

 一方、相次いで出版された「のりピー暴露本」は、3冊合わせて初版で5万部が出荷され、増刷もウワサされる。

 ある芸能リポーターは「エマージェンシー出版だ!!」と言い放ち、人の不幸で商売をして、笑顔で握手・サイン会を開いた。

 そして、自称・芸能ジャーナリスト(?)は、したり顔で、あたかも真実の暴露本のごとく自著を語り、真っ赤なウソをイージーにも、憶測とウワサのまま書き殴った。

 「真っ赤なウソ」を書くのが小説だが、真っ赤なウソのままのノンフィクションなんて聞いたことがない!!

 そんな類の本が「オンエア」と同じくらいの部数で、書き手に入る印税金額も同じぐらいなのかと思うと、小説家とは苦労の割に、もうからない商売だとつくづく思う。

 平成の女子アナ暴露小説「オンエア」が、何がなんでも10万部、つまりベストセラーになってほしいと願ってやまない。だって、私の大好きなエロがスゴいんだもの…。(出版プロデューサー)