【元気のヒミツ】米良美一さん 弱さと向き合い取り戻した声

2009.10.15


米良美一【拡大】

 1997年、宮崎駿のアニメ映画『もののけ姫』のテーマ曲で一世を風靡した歌手・米良美一さん(38)。実はそのヒットの裏では、肉体的限界、精神的な重圧から、一時、美声が出なくなった時期もあったという。いまの心境、美声を取り戻したきっかけなどを聞いた。

【先天性骨形成不全症】

 「『元気』とか『健康』という言葉は、生まれつき難病を持っていた私にとっていちばん無縁の言葉。むしろ私のほうが皆さんに聞きたいくらいです」

 第一声で語られたのは、そんな意外な言葉だった。

 才能溢れた美声の持ち主ながら、先天性骨形成不全症という難病を持ち、養護学校で過ごしたことを「ずっと隠していた」という米良さん。

 143センチの小柄で西洋の音楽・クラシックを歌うため、「180センチの人と並んでも負けない」というムリもしてきた。

 『もののけ姫』の大ヒットで脚光を浴びたときには、すでに肉体的には限界を迎えていたという。

【限界】

 「眩しい光を当てられているとき、私の後ろには大きな闇が広がっていました。泣きたいのに笑っていないといけない状況で、自分で自分にウソをついていた。それまでは“自分”だけにこだわる生き方で済んでいたけれど、有名になることで、人のため、世のために歌うという大きな役目を背負うことになり、耐えられなくなったんです」

 肉体的限界、さらに精神的重圧から、「美声が出ない」という状況にも陥った。「命」ともいえる美声を取り戻すきっかけは、いったい何だったのか。

 「自分の未熟な部分を指摘してくれる東洋医学の先生との出会いです。それまで私は、エゴのかたまりでした。自分だけが苦しくて、“被害者”だと思っていました。でも、本当は“加害者”で、自分自身が敵だったんです。先生に『すべての結果は、すべて米良さんに原因がある』と言われて、パニックになりました」

 だが、パニックに陥ったことで、自分が逃げてきた部分、目をそらしてきた部分と初めて正面から向き合えたのだと話す。

【取り戻した声】

 「以前は、自分以外は恐怖で、世間・人とのつながりを避けていました。でも、他人の言葉に耳を傾け、自分の弱い心、卑怯さと向き合い、受け入れるたびに、不思議と声が戻っていったんです」

 「病気は内側から生まれるもの。怨み、妬み、嫉みなどがなくなれば、病気はなくなる」と言うのは、そんな米良さん自身の経験から出た実感だ。

 「歌声」もまた、新たなステージに入っている。

 「以前は加湿とか、物質的なところに気をつけていたけれど、目に見えないモノに目を向けるようになりました。自分といかにつきあうか、それがすべて声につながるんです。声は私にとって、健康をはかるバロメーター。健康そのものが『歌』なんです」

 自分の中で作ってきた壁を超え、新たな一歩を踏み出した米良さん。今後、目指すところとは?

 「日本人、東洋人とかでなく、これからは誰とも比べるものでない『米良美一』を歌いたい。病気で生まれたからこそ、病気を取り除く、魂を浄化する作業を日々やっていきたいと思います」

ペン・カメラ 田幸和歌子

■プロフィール 1971年、宮崎県生まれ。洗足学園音楽大学を首席で卒業。2007年、『天使の声〜生きながら生まれ変わる』(大和書房)を出版。10月17日、21日に、デビュー15周年記念リサイタル開催予定(日経ホール)。今回の見どころは、これまで歌ってきたクラシック、二グロスピリチュアルのほか、「人に喜んでもらうため、元気になってもらえる歌を」と、昭和歌謡にもチャレンジ。「これからの米良美一というジャンルを築く第一歩を宣言するコンサートにしたい」(本人談)