「なぜ今安吾なのか?」という問いかけに著者は、閉塞感でがんじがらめになった現代社会にこそ、本音をさらけ出して正直に生きた安吾の言葉が必要なのだ、と結論づけている。
本書は、『堕落論』などの作品で知られ、無頼派の作家・坂口安吾の「言葉」を著作から抜き出し、架空の一問一答式にまとめたものだ。日本人や社会に対する安吾の見方は、なかなかニヒルで鋭い。
“日本人の本質”について安吾は、「恨みや憎しみを持てない人種」と見抜き、「血に飢え、八つ裂きにしてもなお足りぬという憎しみは、日本人にはほとんどない。『昨日の敵は今日の友』という甘さが、むしろ日本人に共有の感情だ」(日本文化私観)としている。いまだ世界になめられっ放しの日本外交などをみれば、安吾の見方は見事というほかない。(長尾剛編著、PHP研究所、1365円)
