もっとトイレに行きたくなる? トイレ界の“識者”5人が語る

2010.07.09

 1日の食事回数よりも付き合いの多いトイレ。日々何気なく使っている場所だが、世の中にはトイレをこよなく愛し、よりトイレを進化させるべく情熱を燃やしている人々がいる。そんなトイレと便器の“専門家”らを、業界とは関係のないイベント好きの社会人有志が招いたトークセッション「トイレLOVEサミット2010」が、東京・青海の東京カルチャーカルチャーで開かれた。個性的な面々が語った、トイレへの愛情とは−。

 【便器があるだけでありがたい】

 「公衆トイレで一番大切なのは『日当たり』です」。そう力説して笑いを誘ったのはお笑いトリオ、インスタントジョンソンのすぎさん。高校時代はお腹が弱く、自転車通学を強いられた。いつ便意をもよおしても即座に駆け込めるよう、自宅のある東京・王子から池袋までに点在するあらゆる公衆トイレを熟知した。

 現在では、その時に培った観察眼を生かしネット上で「公衆トイレミシュラン」を連載するほどに。「東向きだとぽかぽかして暖かいんです。風通しや(個室の)幅も大事」と“通”らしい視点を披露する。一方、マナー違反や清掃の行き届いていないトイレに出会ったら“理想を下げる”ことが大事なのだとか。「トイレなのに便器がないんじゃないか、ぐらいの気持ちで入って行けば、便器があるだけでありがたいんだと思える」と“ヘビーユーザー”ならではの乗り切り方を伝授した。

 公衆トイレでの不満をきっかけに、前代未聞のトイレ専門企画会社を立ち上げてしまったのは、「アントイレプランナー」創業者の白倉正子さん。学生時代、ストッキングが伝線した際に駆け込んだ駅のトイレがあまりに汚く、「トイレが快適だったらもっと人が集まるんじゃないか」と大学卒業後に起業。百貨店など商業施設のトイレのコンサルティング、愛知万博などのイベントのトイレ対策、清掃用具の開発協力まで、手がける業務は多岐にわたる。

 「トイレ掃除をかっこいい仕事にすること」が白倉さんのモットーだ。トイレ掃除を児童ではなく用務員が行うある学校で、教師が児童に「勉強しないと、便所掃除しかできないみじめな人生になる」と言い放ったというエピソードを目にしたことが忘れられない。「自分で汚したものを自分で掃除できない人間を育てるな」と話す白倉さん。3児の母としての顔も覗かせた。

 【トイレは人間が唯一、1人になれる空間】

 外界から離れ、自分と向き合う場所でもあるトイレは、アーティストにとっても格好の表現の舞台だ。トイレ壁画デザイナーとして活躍する松永はつ子さんは、国鉄横浜駅や御茶ノ水駅のトイレ(いずれも現存せず)から米ニューヨーク水族館のトイレまで、30年以上にわたり国内外でトイレ壁画を描き続けてきた。

 20代のころ、初めて壁画に挑んだのが幼稚園のトイレだった。以来、子供たちが安心して使えるトイレを作りたいという思いを変わらない。「トイレは人間が唯一、1人になれる空間。アイデアや発明が生まれることも多い。子供が安心でき、想像力を引き出す空間ではなくては」と力を込める。

 トイレの中での自分自身を被写体にした作品を発表したのは、「大沢佑香」「晶エリー」の名でAV女優としても活動する写真家の照沼ファリーザさん。昨春に開催された「GEISAI#12」では「食欲と性欲」と題する展示を行い、自ら便器に扮した写真などが話題に。リリー・フランキーさんから個人賞を贈られた。

 照沼さんは、女性として「自分の汚い部分に悩んでいる様子と(同時にそれを)受け入れたいという気持ちを出した」と作品にこめた意図を語る。また、トイレが時としていじめや事件の舞台となり、罪悪感と結びつく場所であるとも指摘。そうしたトイレの持つ“影”が、アーティストにとっては魅力のようだ。

 【節水、健康管理…しのぎ削る便器業界】

 トイレを語る上で当然、避けて通れないのが「便器」の存在。いまや洗剤で自動清掃してくれる便器や、用便をしながら健康チェックができる便器も登場している。

 この日、会場で「便器講座」を披露したのはお笑いコンビ、どきどきキャンプの佐藤満春さん。NHKの「プロジェクトX」で温水洗浄便座の開発物語を見て、便器にハマってしまったという佐藤さんの研究熱心ぶりには、便器メーカーも一目置くほど。新製品開発の場に呼ばれたり、社内報のコラムといった仕事も舞い込むようになった。

 佐藤さんによると、「節水競争の激しさ」が最近の便器業界のトレンド。現在は洗浄水量13リットルや6リットルのものが主流だが、「全部のトイレが4・8リットルになれば、(全世界で)年間12万トンのCO2削減になる」と力説する。このほか、2003年で製造中止となってしまった“和式”の温水洗浄便座の写真など、貴重な資料も交えながら豊富なウンチクを披露していた。

 くだらない話だったはずなのに、いつの間にか教育論や環境問題に発展するなど、トイレの奥深さを垣間見た4時間。パネラーひとりひとりのの分野は違えど、トイレを愛する気持ちは同じ。彼らがいれば、日本が誇るトイレ文化の先行きも明るい!?

 

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