立川談春「芝浜」の落語の力を信じる

2010.12.08

 2年前のクリスマスに、閉館間際の大阪・フェスティバルホールで独演会を開催。上方の落語家が誰もしたことがない、考えもしなかった2700人収容の大ホールで敢行し、大観衆を魅了した。東京の立川談春でしかできなかった快挙であり、以降、伝説を作った落語家として大阪を席巻することにもなった。

 この時、トリで演じたのが「芝浜」。魚屋夫婦の情の機微を全身全霊の語りで届け、噺の詩情とともに談春の火のような落語家魂も強烈に印象づけた。

 そもそも、その半年前にあった師匠・談志との親子会で、談志が体調不良のためにできなかった十八番を代わりに演じたもの。談春にはとりわけ特別な噺なのだ。

 その「芝浜」をひっさげ、再び暮れに大阪で独演会を開くことになった。25日午後4時半、26日午後3時、ともに大阪市中央区のNHK大阪ホール。こちらも1400人収容だ。なぜまた、と思う人もいようが、談春はこう言う。「大阪で2700人しか聞いていないと言われ、心が動いた。俺は『芝浜』の落語の力を信じてみようと思ったんです」

 大阪ではこの噺や「紺屋高尾」「文七元結」など、談春といえば人情噺のイメージが強いが、さまざまな引き出しを持つ。だが、あえて「芝浜」をかけるのは「落語はもっと広く愛されていい。より多くの人をとりこむための方法・手段として、これが入り口になればうれしい」。

 スクリーンも使い、また濃密な落語世界に浸らせることだろう。大一番の勝負を続ける希有な落語家だとつくづく思う。なお、来年3月27日には堺市民会館大ホールで「子別れ」通し上演も予定している。(演芸ジャーナリスト やまだりよこ)

 

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