中卒フリーター親子2代で逮捕歴…芥川賞作家の素顔

2011.01.18


西村賢太さん【拡大】

 異色の芥川賞作家が誕生した。「苦役列車」で第144回芥川賞に輝いた西村賢太さん(43)は、その日暮らしの中卒フリーター作家。親子2代で逮捕歴もあるという“経歴”の持ち主だ。会見では賞の知らせを受ける直前、「風俗(店)に行こうかなと考えていた」と語って爆笑を誘う気さくな一面も。一昨年「小銭をかぞえる」で同賞の候補にもなった実力派だ。

 「きことわ」を執筆した朝吹真理子さん(26)とのW受賞になった今回の芥川賞。17日夜、会見の場となった東京会館(東京都千代田区)でひときわ爆笑を誘ったのは西村さんの方だった。チェックのシャツに短パン姿という普段着姿。吉報は自宅で受け「まぁ、そろそろ風俗(店)に行こうかなと思ってた。行かなくてよかった」と笑わせた。

 受賞作は、人のせいにして生活するダメ人間が主人公。中学を出た後、日雇い労働で生活を送るが、人間関係でトラブルが起きて…と19歳の自身をモデルにした。「自分のことしか書けない」と8割は体験談と話し、「屈辱的な所を書かないと」と自虐的な私小説にこだわった。

 普段の生活は、アルバイトを中心にそれがないときは「昼過ぎに起きてサウナに行くか、一杯やってます」と話して再び会場を沸かせた。

 最終学校歴が中学卒業の芥川賞受賞は、1998年の第119回、花村萬月さん以来。西村さんは東京都出身で11歳のとき、運送業の父が事件を起こして逮捕。中学を出てから港湾作業員、警備員などで生計を立てた。

 20歳過ぎに藤沢清造の小説に出会い心酔。西村さんが暴行で留置場に入った29歳の時、藤沢が貧困のなかで凍死したことを思い出し、藤沢の全集の編集を目指すようになったという。07年「暗渠の宿」で野間文芸新人賞、08年には「小銭をかぞえる」で芥川賞候補になり、下馬評は高かった。

 W受賞となった「きことわ」の作者・朝吹さんは東京都出身。祖父(故人)と父の亮二さんがフランス文学者で、大叔母はサガンの翻訳で有名な朝吹登水子さんという“サラブレッド”。現在、慶大大学院で近世歌舞伎を研究している。09年に「流跡」でデビューし、昨年同作でBunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少で受賞。わずか3作目での栄冠となった。

 「きことわ」は葉山(神奈川)の別荘を舞台に、25年ぶりに再会した2人の女性の、現実と記憶とうつつが交錯する幻想的な物語。「うれしさと畏怖の両方がないまぜになった状態です」と受賞の喜びを語った。

 第144回直木賞もW受賞となり、5回連続で候補に挙がっていた道尾秀介さん(35)の「月と蟹」(文芸春秋)、木内昇さん(43)の「漂砂のうたう」(集英社)が選ばれた。

 

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