実体験が感動…53歳男の泣ける家族愛ソング現代版「瞼の母」

★大人のエンタメ!

2011.02.02


“家族の絆”を切々と歌う西つよし【拡大】

 時代は今“家族愛の歌”を必要としている。なぜならば、親が子を傷つけ、子が親に刃を向けたりするような凄惨な出来事が続き、家族の崩壊が始まっているからだ。だからこそ逆に、“家族の絆”の大切さが再認識され、“家族の絆”をテーマにした“家族愛の歌”が共感を呼んでいるのである。

 その証拠に“家族愛の歌”が連続してヒットしている。秋川雅史「千の風になって」は先祖を敬う“供養歌”、すぎもとまさと「吾亦紅」は亡き母に捧げる“鎮魂歌”、樋口了一「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」は老いた親が子に贈る“遺言歌”、植村花菜「トイレの神様」は亡き祖母の“形見歌”と言っていい。これらの歌は“家族の絆”のあるべき姿を考えさせてくれるきっかけとなっている。そして究極の“家族愛の歌”がリリースされた。西つよしの「ただ、会いたい〜母へ〜」である。現代版「瞼の母」と言っていい。

 この歌は運命的に生まれた。作詞家・にしかずみはある日、新聞の読者の投稿記事に衝撃を受けた。生後2カ月の時に東京・上野公園のベンチに置き去りにされた男性の、64歳になってもなお母を待ち続けているという心情に感銘を受けて「ただ、会いたい〜母へ〜」を書いたのだ。

 その詞を受け取った作曲家・西つよしは「こういう方もいらっしゃるのだ」と感動しながら曲をつけたと言う。

 「わりとさらさらと書けました。というのは、この詞を読んだときに、これは自分で歌うようになるんじゃないかな、とばく然と感じていたので、自分の原点であるフォーク調で自然に書けたからです」

 西は長山洋子の「じょんがら女節」、門倉有希の「哀愁エリア」などのヒット曲で知られる現役の演歌系作曲家だが、若かりし頃はフォーク・シンガー志望だったのだ。案の上、曲はできあがったが、歌ってくれる歌手が見つからなかった。そこで3年ほど前から自分のライブで歌い始めたところ、思わぬ反応が出始めたのだ。

 「歌うたびにハンカチを手に泣く人が増えたんです。ライブの度にひょっとしたらこれはと実感するようになりました」

 そんな評判がいつしか噂となり、それが日本クラウンのプロデューサーの耳に届き、53歳にしてシンガー・ソングライターとしてデビューという奇跡を起こしたのである。

 読者の実体験が作詞家を突き動かして一編の詞を書かせ、さらにその一編の詞が作曲家を感動させて曲を作らせ、そして歌力が聴き手のハートを鷲掴みにしたのだ。時代が「ただ、会いたい〜母へ〜」を生み出したに違いない。

 (音楽評論家・富澤一誠)

 

 

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