うつみ宮土理「無限の優しさ」の持ち主

2011.02.16


うつみ宮土理【拡大】

 7年前、「宮土理さんが高平さんを紹介してくれる?って言うんだけど、いいい?」とチャコこと白石冬美さん。うつみさんとは仕事はご一緒したことはないが、パーティなどですれ違えば、一礼くらいはする仲だった。ご主人のキンキンこと愛川欽也さんは、デビュー間もないタモリが出演した『お正月映画全部見せます』(日本テレビ)という年末特番で仕事をしたのが最初で、その後、2人が共演した松竹映画『喜劇役者たち/九八とゲイブル』(1978年、瀬川昌司監督)のとき、大船でしゃぶしゃぶをご馳走になったことが忘れられない。

 うつみさんのテレビ・デビューは子供番組『ロンパールーム』(日本テレビ)の2代目先生だ。「鏡よ鏡よ鏡さん」の彼女の印象が強く、3代目以降、先生は最後の6代目まですべてみどり先生になった。余談だが、ぼくはこの後番組の子供向きバラエティ『なんじゃ・もんじゃ・ドン!』の構成をやっていた。同局の『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』で、うつみと吉田今日子、ジュディ・オング、宮本信子がショートコントのつなぎをゴーゴーガールズでやっていたのが懐かしい。

 うつみさんは習っているシャンソンを中心にしたライヴをやりたいと言って、その構成演出をぼくに頼んだ。バックのピアノとバイオリンを選び、ボイス・トレーナーと音楽監督を『今夜は最高!』以来、ぼくの音楽関係の仕事は九割以上付き合ってくれている古賀義弥さんに頼んだ。

 会場は、渋谷道元坂のヤマハ対面のビルに出来る新劇場。愛川さんが改装して、2階3階を稽古場と事務所に、地下を劇場にした。うつみさんのショーがその小屋のこけら落しである。公園通りにあったジャンジャンがすでに閉鎖し、そのためにも渋谷に小劇場をという愛川さんの崇高な思いから、この劇場はジョンジョンと名付けられた。2004年3月に無事3日間の初日を開けた。ロビーに収まらない芸能人の花が歩道にまであふれた。3カ月後、その花の礼状を書き終わる前に劇場が終わった。ここを紹介した不動産屋の手違いもあって、地下に作った劇場は消防法に適していなかったのだ。

 「思いっきりあたしへのキンキンの愛から劇場を作ったわけでしょう。自分も俳優座にいて劇場や楽屋の匂いとかが好きでたまらないの。行動力と気力と体力があるけど、お金に無頓着なの。1万円までは細かいんだけど、10万以上はわかんなくなっちゃうの。妻としてガンと怒ったりすりゃぁいいんだけど、あたしも次のシャンソンはどこでやろうって考えちゃうの。あたし、50代からあの人は年上の一人息子と思えるようになって甘やかすようになっちゃったのね」−。うつみさんの無限な優しさは、彼女の周りのすべての知人にも平等だ。

 4年前、新藤兼人脚本、川島雄三監督の『しとやかな獣』を舞台化して演出した。山岡久乃と伊藤雄之助が演じた主役夫婦をうつみと坂本あきら、若尾文子演じたクラブのママを真琴つばさが演じた。うつみさんには珍しい悪役だった。終演後、「いいよ、よかった!」を連発しながら楽屋に来てくれた愛川さんの優しさも妻に引けを取らない。

 09年6月、目黒区青葉台にキンケロ・シアターがオープンした。「キンキンが私財を投じて」とスポーツ紙に載ったが、5年前に投じてしまった私財がまだあったのに驚かされたのはぼくだけじゃないだろう。今度の劇場は法的な問題もなく、貸小屋としても成功しているらしい。「5年で立ち直っちゃうんだから、あたしたちすごいね」−。他人事のようにそう語るうつみさんは確かにすごい。(演出家・高平哲郎)

 ■たかひら・てつお 1947年1月3日、64歳、東京生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、広告代理店、編集者を経てフリーに。以後、テレビの構成や芝居・ミュージカルの翻訳演出等を手掛ける。現在「笑っていいとも」「ごきげんよう」に参加。著書に「スタンダップ・コメディの勉強」「今夜は最高な日々」など。

 ■うつみみどり 女優。作家。1945年10月1日東京都世田谷区生まれ。実践女子大学文学部英文科を首席で卒業後、朝日新聞社「ディス・イズ・ジャパン」編集部勤務を経て『ロンパールーム』(日本テレビ系)の先生役に転身。愛称はケロンパ。夫は愛川欽也。近著に『新カチンカチン体操』がある。

 

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