美空ひばり、知られざる母としての素顔

★加藤和也著「美空家の歳時記〜昭和を生きた家族の記憶」(廣済堂出版)

2012.08.12

連載:ブック


加藤和也氏【拡大】

 昭和の歌姫、美空ひばりさん。2011年に迎えた23回忌を締めくくるのが、ひばりさんの長男、加藤和也氏(41)のこの著書だ。同家に伝わる様々なしきたりや風習を通して垣間見られる母、加藤和枝さんの素顔を紹介した本紙連載の「ひばりの心得」を加筆。年中行事を重んじた美空家が語りかけるものとは−。(写真・大山実)

  −−2年11カ月に及ぶ本紙連載『ひばりの心得』の思い出は

 「連載中にオーストラリアへ1カ月ほど滞在したことがありました。新しいPCを持参しましたが、入国時に荷物を乱暴に扱われ破損。レンタルの携帯電話で書きましたが、途中で2度、原稿が消えて、書き終わるまで4時間半、掛かったこともありました。それを再び掘り起こしての出版ですから、達成感があります」

 −−重点を置いたのはどの部分でしょう

 「四季に分けて編集したことで、ひばりファン以外の方が読んでも、分かりやすいと思います。正月や祝い事の席で並ぶ鯛の尾頭付きにある『鯛の鯛』と呼ばれる縁起のいい小骨を取る儀式や元旦の墓参りなど、家族で過ごした年中行事を振り返ったことで、今だから分かったこともありました」

 −−そんな中から自然と身についたことは

 「おふくろやばぁちゃんから、出掛けと帰ってきたときは必ず、仏壇のじぃちゃんにあいさつをしなさい、と言われ手を合わせていたことです。もうすぐお盆ですが、今でもナスで馬を作ったりしています」

 −−出版にかける気持ちは

 「歌手、美空ひばりが亡くなって23年経つのに、まだこうして人様に歌を聴いてもらえる理由を僕自身、明確にしたかった。美空ひばりはどういう歌手だったのか、を知ろうとしたとき、加藤和枝という人間性の部分が全てだと思ったのです。家の中での素顔が、歌の評価に繋がっているのでは…と思い、記憶にあるおふくろを紐解いたのです」

 −−ひばりさんは母として、運動会や卒業式など学校行事にも可能な限り参加されていた

 「小学生のとき、戦争について家族の人に聞いてきなさい、という宿題が出ました。地方巡業中のおふくろにその話をすると、幼い頃に体験した空襲の話をカセットテープに吹き込み、速達で送ってきてくれたこともありました。そうそう、僕が飼っていたインコに聞かせるようにと預かったテープは、スイッチを入れると、おふくろの声で『かーくん、宿題やって』と25分、流れてくるものもありました。覚えられたら困る、と思ってインコに聞かせなかったものです。いつになっても話せないので『おかしいわね』って言ってました(笑)」

 −−お化け屋敷でのイヤリング事件や交換日記などのエピソードも興味深いですね

 「発想がユニークなんです。子どもの頃に子どもっぽいことをしていなかったことも影響していると思います。一緒にいた時間は短かったけれど、本当にいろいろと考えてくれていました。どうぞ、おふくろ、加藤和枝の素顔をのぞいてみてください」

あらすじ 本紙で、2008年9月30日から11年8月30日まで連載した「ひばりの心得」をもとに、加藤家に伝わる四季折々の風習などを紹介。家族の揃う時間が少ない中、年中行事を大切にし、一緒に過ごす中で築かれた家族の信頼関係や家族にだけ見せた美空ひばりさんの素顔を長男、加藤和也氏がひもとく。

加藤和也(かとう・かずや) 1971年8月10日、東京都生まれ、41歳。(株)ひばりプロダクション、(株)京都嵐山美空ひばり座の代表取締役。87年、母で歌手、美空ひばりの仕事に従事、88年に株式会社ひばりプロダクション副社長、89年には社長に就任。母亡き後、音楽プロデューサーとしての経験を積むため、ブルースシンガー大木トオルさんの元で6年間修行し、ベン・E・キングなどのアルバムに参加する。

 

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