“女装”がテーマ…窪田監督「曖昧さに人間臭さが…」

2012.11.28


映画「僕の中のオトコの娘」【拡大】

 昨今で大きな社会現象となっている“女装”をテーマにした映画「僕の中のオトコの娘」。生きづらい世の中で引きこもりから女装の世界に目覚め、社会に再復帰する世界初の女装娘青春映画である本作が12月1日より銀座シネパトスほか全国にて順次公開される。

 女装というとテレビで活躍中の多くの女装家や女装芸人の影がよぎるが、世間一般で女装を嗜む男子はモテるためだったり、息抜きのためだったり、さまざまな理由や環境があるという。ゲイカルチャーほど古くもなく日本独自の文化と言われる女装の世界を切り取った窪田将治監督に女装について、また変わりつつある家族や性の形についてを聞いた。(産経デジタル・上坂元)

−−今作で、女装する男子(通称・女装娘)を撮ろうと思った理由は?

 今から7年前、偶然行った新宿3丁目の店が女装BARで、そこで初めて女装の世界に触れました。ゲイでもオカマでもトランスジェンダーでもない、曖昧というか“曖昧なんだけど芯がある”人間臭さと言うか日本人らしさというか、その世界が非常に面白いと感じ、この映画の企画を立てました。しかし7年前は女装と言うカテゴリーが世間に浸透しておらず映画化は実現しませんでした。解りづらいと言うことですね。

−−そうですね。現代では女装やトランスジェンダーといった言葉が頻繁に出てきますが、今と一昔前とでは何が変わったと思いますか?

 今も昔も、女装やトランスジェンダーといった方々は多くいたと思いますが、情報化社会になってグローバルに情報が共有できるようになった事が大きく変わった部分だと思います。“自分と同じ悩みがある人間”に出会うことができ、孤独感が緩和され生きる事の希望が見えるようになったのかもしれませんね。僕は人間ってそんなに強い生き物でも無いと思っている所があるので…。

−−謙介は女装やそれ以前に会社を辞めたことなどが大きな転機となったわけですが、過去、監督にも大きな転機はありましたか?

 「人生は切り開いていくもの」だとよく聞きますが、僕は「人生は切り開いてもらうもの」と思っています。転機と言う意味では、今、僕は38歳ですけど自分の人生を振り返るだけでも“出会い”がすべての転機になっているように思います。誰かに出会い、物事に出会うことで自分の人生はどんどん変わっていっている。良い意味でも悪い意味でも「あの時、あの人に出会わなければ違う人生を歩んでいたかも」とか「映画に出会わなければ違う人生だった」とか…。自分の意志で人生の舵を切る事なんてあったのか今だに分からないですね(笑)生かされている感じがしてならないです。

−−今作の主人公である謙介は家族と同居していて、姉は母親代わりとなり、父は再婚せず。家族の在り方も年代によって変わってきていますよね。監督の家族観をお教えください。家族とはどうあるべき、またどうあってほしいものだと思いますか。

 難しいですね。分かりやすい所で言うと大家族が核家族になり現在は少子化になってペットが家族の一員になってきた。僕はまだ独身なので家長として実際に家族を持ったことはありませんので、家族の一員としての家族観になりますが、仲間意識が強い家族が良い家族のような気がしています。家族の誰かが何かを始めたら応援するような、ですかね…。−本作の足立一家もいろいろありますがとても仲間意識が強い家族ですね。

 家族って血の繋がりじゃないですか、「血は水よりも濃い」と言うくらいですから。良いことでも悪いことでも何か起こしてしまったら最終的には親兄弟が守ってくれるという安心感はありますね。ただ本当に難しい話なんですけど経済的にある程度の体力がないと「血は水よりも濃い」と言ってもままならない場合もありますよね。あとコミュニケーションが不足していたりとか…。子供を捨てる親がいる世の中ですから。

−−監督のお気に入りのシーンとその理由を教えてください。

 いっぱいあるんで難しいですけど…挙げるとしたら、明け方、女装した謙介が自暴自棄になって「自分が嫌いだ…」と呟くシーンなんか好きですね。画も好きなんですけど、僕自身も「なんで俺はこうなんだ!」と嫌いになる事は多いですから(笑)あと中村ゆりさんのシーンで主人公の女装癖を知って部屋の前で語りかけるシーンは滑稽で好きですね。何回見ても笑ってしまいます。モントリオールで上映された時もドッカンドッカン、ウケてました(笑)ただ日本じゃそんなにウケてないです(笑)

−−監督にとっての女装娘とはなんでしょうか?

 一つの作品なのかもしれませんね。自分自身を女装という姿で表現したというような。絵が上手い下手があるように、化粧一つをとっても上手い人、下手な人と居るわけで。女装も自宅でひっそりやっている人もいるでしょうし、街中を歩きまわる人もいる。1人で小説書いて恥ずかしいから誰にも見せない人もいるでしょうし応募する人や出版する人もいる。僕の中では作品かもしれませんね。女装を追及している女装娘はやっぱり尊敬しますよ。

−−監督が自分で「これって他の人と違うかもしれない…」と思うことを教えてください。

 僕はあんまり他人と違っていると思ってないんですよね…僕ほど常識人間は居ないのでは?と思っているくらいです(笑)だからマイノリティだったり狭い世界に興味があるのかもしれませんね。自分自身も映画という狭い世界に生きてますので。

−−監督が惹かれる普遍的なテーマというのはありますか?

 普遍的なテーマって言うと広すぎますね…。ただ僕は基本、ニッチな世界に惹かれます。今回の女装もそうですが、僕の映画の『スリーカウント』(2009)は女子プロレスが題材ですし。狭い世界で必死に生きようとする人間に非常に惹かれますね。

−−監督が生きづらさを感じるのはどんな時ですか?また、それに挫けずにやっていく秘訣は?

 いつも生きづらさは感じてますね。映画の時なんかは特に。オリジナルの映画が創りづらい世の中ですし、しんどいな〜といつも思っています。結局は、何をやるにも自分自身に負けない事なんだと思います。手を抜こうと思えばいくらでもできるわけですから。もちろん決まり事はあるので出来る事と出来ない事は出てきますが。映画でも、お金が無いからこの位で良いだろうとか、ここまでやれば十分だろうとか…。極力、そんな事はやらないように、もしくはやらせないようにしていますね。諦める人間や手を抜く人間が嫌いなんで(笑)プレッシャーを持ってやっていかないと立っていられない瞬間がありますよね。どうせ倒れるなら前のめりで倒れたいです(笑)

 ■窪田将治(くぼた・しょうじ)1974年、宮崎県出身。2006年に『zoku』で劇場映画デビュー。江戸川乱歩原作の映画『失恋殺人』(2010)、『CRAZY−ISMクレイジズム』(2011)、そして今作『僕の中のオトコの娘』(2012)とモントリオール世界映画祭に異例の3年連続正式出品。幅広い作品を手掛けながらも一貫してリアルさを追求する、今後の活躍が期待される映画監督だ。

 

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