現代CMソング考 求められる視覚と聴覚への“瞬間刺激”

2013.04.03

 歌手の土屋アンナと氣志團が初コラボした日本クラフトフーズのガムのCMが話題だ。商品のブランドコンセプトである「自分らしさを貫く姿勢」が土屋と氣志團のイメージに合うということで、CM制作サイドからのオファーで実現。

 CGを駆使して猿に変身した愉快な映像もさることながら、ミドルテンポのCM曲が、後半テンポアップしていくロックチューンの展開で、土屋と氣志團の綾小路翔のツインボーカルはノリもよく聞きごたえがある。

 音楽のないCMはない。昔は通称コマソンと呼ばれ、そのCMのためだけにコマーシャルソングが制作されていた。CMの長さに合わせてサビの部分だけの制作が多かったのも特徴。

 今や当たり前になっている既存曲や新曲とのタイアップ、つまりはコラボレーションの歴史は意外と浅い。

 1972年には吉田拓郎が富士フイルムのCM曲『Have A Nice Day』を、大瀧詠一が三ツ矢サイダーの『Cider’73』を手がけ、若者たちの商品購入につながるだけでなく、企業のイメージアップにも貢献。CMと楽曲のコラボが大きな評価を受けた。

 78年の矢沢永吉の『時間よ止まれ』は資生堂とのタイアップで、楽曲はミリオンヒットを記録。ちなみにレコーディングには、坂本龍一や高橋幸宏がミュージシャンとして参加した。

 これまでに桃井かおり、大友康平、高橋真梨子らがカバーしているが、最近、五木ひろしもレコーディング。

 ジュディ・オングの『魅せられて』(79年)はワコールのCM曲だが、いわゆる商品のコマーシャルソングではなく、CMのイメージソングとして起用。結果、300万枚というセールスに。

 これがきっかけとなり、CMイメージソング時代が到来する。

 CMへの起用は時に企業の顔の役目を果たす。小田和正が『ダイジョウブ』を歌いながらクレーンの箱に乗り、高所の清掃作業員に扮する映像が好評の無料通話アプリ、LINEのCM。LINEのセキュリティーがとかく言われがちな中で、このCMの果たす役割は大きい。

 安室奈美恵の『Big Boys Cry』を流すのはコーセー化粧品。女性に絶大な人気を誇る本人をキャラクターに起用し、春らしいダンスナンバーの楽曲に乗って展開するCMは、アムロの“大人かわいい”の世界を存分に魅せている。実はこの商品CMは、CMソングとして『Big Boys Cry』と昨年来、CMで流れていた幻想的な『Beautiful』の2曲が制作されていた。

 2曲目がオンエアされるタイミングで、今年第1弾の両A面シングルCDとして発売される。

 互いが利用し合って、相乗効果を上げている。

 北川景子が出演するコンタクトレンズのCM曲はaikoの『4月の雨』。別れと出会いが交差する春らしいミディアムテンポのバラードはCMのために制作された曲で、aikoの澄んだ歌声と北川の目力が相まって印象的なCMになっている。

 今のところ楽曲のシングル化は未定のようで、ファンの期待は高まり発売への盛り上がりを見せる。

 タイアップの前提は、互いがプラスαの効果を期待できることにある。

 CMは、視覚と聴覚を瞬間的にわしづかみにする奇想天外さが求められる。デジタルの進化で、映像と音楽のコラボがどんな結晶を産み出すのか、楽しみでならない。

 ■酒井政利(さかい・まさとし)和歌山県生まれ。立教大学卒業後、日本コロムビアを経てCBS・ソニーレコード(現、ソニー・ミュージックエンタテインメント)へ。プロデューサー生活50年で、ジャニーズ系・南沙織・郷ひろみ・山口百恵・キャンディーズ・矢沢永吉ら300人余をプロデュースし、売上累計約3500億円。「愛と死をみつめて」、「魅せられて」で2度の日本レコード大賞を受賞した。2005年度、音楽業界初の文化庁長官表彰受賞。

 

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