【桃風の檄評】弁慶役1000回超! 幸四郎の豪壮な山伏が最高

2013.04.10


おなじみ「勧進帳」。中央が弁慶の松本幸四郎(写真提供・松竹株式会社)【拡大】

 東京・銀座の歌舞伎座が3年ぶりに復活。新開場・こけら落とし4月大歌舞伎としてにぎにぎしく公演中だ。午前11時からの1部、午後2時40分からの2部、6時10分からの3部と、5〜6月まで3部制で上演される。

 昨年末の中村勘三郎丈、今年2月の市川團十郎丈の急逝を乗り越え、坂田藤十郎(81)ほか人間国宝含むベテラン勢、花形と呼ばれる次代を担う、いや担いつつある中堅、若手、その2世、3世たちが危機脱出の意欲漲(みなぎ)る力強い舞台を見せ、満員の客席がどよめく。

 まず、つくしんぼのように顔を出し、伸びゆく新芽俳優たちの胎動。1部の「お祭り」は勘三郎さんを偲ぶ。親友だった坂東三津五郎(57)を中心に所縁の俳優たちの、いわば“献舞”。花道から中村勘九郎(31)と次男、中村七之助(29)に手を引かれ、勘九郎の長男、即ち勘三郎さんの孫で2歳の七緒八君がハプニング登場、大喝采を浴びた。

 さらなるびっくりは、3部「盛綱陣屋(もりつなじんや)」。頼朝死後の鎌倉幕府の覇権争いのさなか、父の目的を達成させるため幼い命を捨てる武将の一子、小四郎を演じる松本金太郎君、8歳だ。長ゼリフもよどみなく、凛然と切腹するさまなど、末恐ろしい役者魂。祖父・松本幸四郎(70)、父・市川染五郎(40)の馥郁(ふくいく)たる血脈の成果か。同舞台で尾上松緑(38)の長男、藤間大河君、7歳も凛々しいチビ武将ぶりで客席を和ませた。

 ベテラン勢の健在。同3部のラスト演目、御存じ歌舞伎18番の一つ「勧進帳」。幸四郎の弁慶と尾上菊五郎(70)の富樫による安宅の関のセリフと見得(みえ)の応酬の見応えは最高だ。弁慶役1000回を超える幸四郎が心身共に豪壮な山伏に成りきる。冷静沈着の中に炎のような男のロマンを秘める菊五郎の作り。中村梅玉(66)の源義経、染五郎、松緑、勘九郎ら配役にも恵まれ、幸四郎=弁慶が入魂の芝居。その帰結が、幕切れの弁慶による花道の飛び六方の引っ込み。片手を挙げ、片足を浮かせ…、所作に合わせ、満場の客席から歓呼の手拍子が沸く。旧世代の歌舞伎ファンには渋面のシーンだが、幸四郎=弁慶の時にはよく、起こる。歌舞伎も時代を呼吸する。役者と観客の幸福な一体感の爆発なのだ。28日まで。 (劇評家・桃風)

 

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