アイドルの“変遷と目線” 十数年後にAKBはどうなっているか…

2013.06.19


AKB48の選抜総選挙で1位になった指原莉乃(中央)。左は2位の大島優子、右は3位の渡辺麻友【拡大】

 アイドルとは旬の化身であり、なまものだ。時代と共にその定義が変わる。

 AKB48の総選挙は蓋を開けてみると、下馬評を覆し予想外の展開。スキャンダルで“飛ばされた”はずのアイドルが中間発表で1位を取り、そのまま逃げ切った。

 つくづくアイドルという定義の大きな移ろいを感じる。

 そもそもidolとは偶像。遡ること1941年、「女学生の友」というキャッチフレーズでデビューを飾ったフランク・シナトラが第1号。

 日本では美空ひばりが国民的偶像から大スターへ。その後、吉永小百合、石原裕次郎らが青春スターとして続いた。

 レコード界でのアイドル第1号は71年、「17才」でデビューした南沙織。

 その後、オーディション番組の「スター誕生!」や「ホリプロタレントスカウトキャラバン」「ミスセブンティーンコンテスト」などが登竜門となり、森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中三トリオ」、キャンディーズ、ピンクレディーなどが登場。アイドルというジャンルの黄金期を迎える。

 80年代には松田聖子、小泉今日子、中森明菜など、「ぶりっ子」「翔んでる」「ツッパリ」等のキーワードが追加され、アイドルの個性が際立つようになった。

 それを一転させたのがおニャン子クラブ。昨日までド素人だった女の子が一気に茶の間の人気者になり、アイドルの聖域を打ち破ったのだ。

 おニャン子人気は、地方に暮らす平凡な自分でもアイドルになれるのではないかと錯覚を起こさせた。

 クラスにスカウトされた子がいると、ダサイとからかわれるほど、シンデレラストーリーに対する憧れが消滅したのも、おニャン子クラブの後遺症。

 さらには、アイドルと言われることに傷つく芸能人まで登場。苦肉の策で“アーティスト”と呼ぶことで本人はご満悦に。

 本来、アイドルからスターになり、力をつけてアーティストゾーンへと移行するのだが、浜崎あゆみのような人気者になると、段階を踏むことに違和感を覚えたはず。

 不況下に見事な仕掛けで登場したのがAKB48。そのセンターが1年を経て色あせる頃を見計らっての総選挙という模様替えは、演出の妙である。

 グループとしてミリオンヒットを飛ばし、常に注目を浴びるが、熱烈ファンが握手券や投票券を求めて大量買いしていると揶揄されるように、数字の迫力はあっても記憶の迫力はない。

 そのせいか、人の視線の先にあるのは心酔のまなざしではなく、どこかイロモノを見るような目。

 頭の回転がよく、AKB48の大樹を背景に逞(たくま)しくはびこる雑草は、歌う、演じる、毒舌も吐く、私生活もネタにする。奔放さとその発言で利を得て、まさに口八丁手八丁。それが、“さしこ”こと指原莉乃だ。

 奇しくも、アイドルとして優等生だった桜田淳子が十数年ぶりに恩人の葬儀に列席した。現在の幸せぶりを想像させるふくよかさと、取る物も取りあえず駆けつけたという感のある髪形で、品を漂わせていたのが印象的。“人の目線”への配慮が伺えた。

 彼女の前後に弔問に訪れた後輩たちが、カメラ目線を意識し、映る角度に気遣うような、アイドル型だったのとは対照的だった。果たしてAKB48は十数年後にどうなっているのだろうか。個として誇れるものを身につけ、“人の目線”に目覚めていてほしい。

 ■酒井政利(さかい・まさとし) 和歌山県生まれ。立教大学卒業後、日本コロムビアを経てCBS・ソニーレコード(現、ソニー・ミュージックエンタテインメント)へ。プロデューサー生活50年で、ジャニーズ系・南沙織・郷ひろみ・山口百恵・キャンディーズ・矢沢永吉ら300人余をプロデュースし、売上累計約3500億円。「愛と死をみつめて」、「魅せられて」で2度の日本レコード大賞を受賞した。2005年度、音楽業界初の文化庁長官表彰受賞。

 

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