湊かなえさん「高校入試」 脚本を小説に書き下ろし…入れ物変われば切り方も違う

★湊かなえさん『高校入試』角川書店1470円

2013.08.11

連載:ブック

 昨年10〜12月にフジテレビ系で放送された長澤まさみ(26)主演のドラマ『高校入試』。本書はその脚本を手掛けた作家、湊かなえさん(40)が改めて同作を小説として書き下ろしたものだ。「意外に難しかった」と振り返る湊さん。ドラマと小説にはどんな違いがあるのか。 (文・写真 格清政典)

 ──難しかった点は

 「テレビよりも面白いものを書きたいと思ったので、一から書き直すつもりで構成からすべてをやり直しました」

 ──自分との闘い

 「先に映像があるのに本を手に取ってもらおうと思ったら、脚本を書いた自分を打ち負かさないといけません。そのために、プラスアルファとなるドキドキ感が必要だと思いました」

 ──掲示板の書き込みを時間軸に、各登場人物の視点から物語を展開するのも仕掛けの1つ

 「テレビで絶対に表現できないのは心理描写です。このセリフを言っている時に、誰が何を考えて、どう受け止めているかを意識しました」

 ──それにしても登場人物が生徒ら23人とは多いです

 「学校の先生が読んでも違和感のないものにしたかったので、この人数は必要でした」

 ──小説にしてみて、イメージが変わった登場人物はいますか

 「校長先生と水野(文昭)先生ですね。2人ともドラマではあまりしゃべらない方だったので、考えさせられました。それに教頭先生のような長いものには巻かれるタイプの人も、共感が持てて好きになりました」

 ──ドラマの脚本は初めて挑戦したオリジナルの書き下ろしですよね

 「一度は連続ドラマの脚本をやってみたいと思っていたので、お話があったときはうれしかったです」

 ──ドラマの脚本で意識したことは

 「視聴率を取らないといけないので、毎週見てもらえる話を意識しました。1話でも見逃したら話がわからなくなるように、毎回(全13話)、事件の伏線を散りばめましたし、各回には必ずクライマックスを入れました。さらに、次回へつなげる終わり方にも気をつかいました。同じ場面ばかりでは飽きられるので、細かい場面転換もしました」

 ──確かに小説とは違いますよね

 「小説は単純に起承転結だけで成立します。実際にやってみて、入れ物が変われば切り方も違うことに気づきました。この作品を書けたことで、小説家として次のステージに進むことができたと思っています」

 ──高校入試が抱える問題を真正面から斬っていますよね

 「高校入試は、無事に通過すれば心に残らないものです。実は記憶にない方が幸せな人生を送っていると思いますよ」

 ──地方にありがちな偏った愛校精神も共感できます

 「私は因島(いんのしま)出身ですが、毎年8月のお盆に中学の同窓会があるんです。たまに帰ると楽しいんですけどね…」

 ──今後の構想は

 「最大の目標は、絶対に映像化できない作品を書きたいですね。ガチガチの本格ミステリーにも挑戦したい。『イヤミス(読んだ後に嫌な気分になるミステリー)』でブームを作りたいです」

 ■あらすじ 県内随一の名門・橘第一高校の入試前日、受験教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」と書かれた張り紙が見つかる。はたして、入試当日、最後の英語のテストで持ち込み禁止となっていた携帯電話が鳴り響く。さらに、採点の段階になって受験番号が書かれていない白紙の答案用紙が見つかるなど、不可解な事件が相次ぐ。しかも、その内部情報はネットの掲示板にほぼリアルタイムで書き込まれていた。容疑者は教師や受験生、PTA会長ら23人。いったい誰が…。

 ■みなと・かなえ 1973年、広島県因島市(現・尾道市)生まれ。2007年に「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し、翌08年に同作を収録した「告白」で作家デビュー。09年に第6回本屋大賞を受賞した。「告白」は10年に松たか子(36)主演で映画化され、累計300万部が売れるベストセラーになった。12年には「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。他に「少女」「贖罪」「花の鎖」など。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

毎日25分からのオンライン英会話。スカイプを使った1対1のレッスンが月5980円です。《体験無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。