登山家・野口健さんの初写真集「野口健が見た世界」 息をのむ“衝撃の写真”も

★野口健さん「野口健が見た世界」集英社・2100円

2013.08.25

連載:ブック

 著名な登山家で、最近はテレビのバラエティー番組でもおなじみの野口健さんが初の写真集を出した。ヒマラヤやアフリカなど著者ならではの「現場」でとらえた写真のすさまじさといったら。 (文・写真 大谷順)

 ──写真集は初めて?

 「そうですね。実は、中学、高校と写真部でした。小さいころに見た(カメラマンが主役の)テレビドラマ『池中玄太80キロ』の影響で、登山家になる前はカメラマンになりたかったのです。2、3年前から再びカメラを持つようになり、ファインダー越しに目線を変えると、これまでとはまた違う『景色』が見えるようになった。これは、新鮮な感動でしたね」

 ──野口さんといえば「現場第一主義」。そこで撮った写真は、さすがに迫力がある。危険な場面もあったでしょう

 「アフリカ・ケニアの難民キャンプやスラム街などには、外国人がほとんど足を踏み入れないところもある。治安は極めて悪く、犯罪、レイプ、麻薬、エイズなどが蔓延(まんえん)しています。だから地元のギャングのような人たちを“ボディー・ガード”にしなければならないのです。でもね、アフリカの人たちは基本的に人懐っこい。カメラを向けると笑顔で返してくれます」

 ──反政府ゲリラに誘拐されたウガンダの元少年兵の写真も印象的でした

 「ウガンダでは6万人以上の少年少女が、反政府ゲリラに誘拐されています。少年は兵士にされ、少女はゲリラと強制的に結婚させられ、子供を産む。脱走して捕まったら間違いなく処刑されてしまう。やり方がまたひどい。木にくくりつけたうえ、同じ立場の少年兵に『かみ殺させる』のです。こんなすさまじい経験をしてきたから、少年らが運良く脱出でき保護されても、なかなか社会復帰ができないのです」

 ──アフリカでは今や中国の進出がすごい

 「日本も多額の援助をしているけれど、問題はほとんどその事実が知られていないことです。その点、中国は徹底していますよ。投資や援助、企業の進出だけでなく、アフリカを訪れる中国人観光客も急増している。だから、ホテルの従業員もボクらを見て、中国語であいさつしてくる。アフリカでは中国メディアの進出もすごい。だからみんな『中国がやっている』と思われてしまう。正直、日本は負けていると思いましたね」

 ──エベレストに放置された登山家の遺体の写真はショッキングでした

 「8000メートル級の高山には微生物もいないのか、遺体はほとんど腐敗しないのです。宗教観の違いもあって西洋人は、(自分の意思で山に登った登山家の)遺体の回収にそれほどこだわらないから、わざわざ人手をかけて降ろすこともしません。だから、エベレストの山頂付近には、こうした遺体がゴロゴロしているのですよ」

 ──野口さんが雪崩にのまれ、九死に一生を得たときの写真もある

 「大規模な雪崩でした。これはもう『死ぬな』と思いましたね。小さな光が見えて、必死で這い出した後に自分の顔を、首からぶら下げていた小さなデジタルカメラで無意識のうちに撮っていたんですよ。不思議な体験でした」

 ■あらすじ 登山家である著者が、ヒマラヤ、アフリカ、戦没者遺骨収集、東日本大震災の被災地などで経験した「現場」を、自身の手による写真と文章で語る。2011年5月、エベレストで大雪崩に巻き込まれ、九死に一生を得た直後に自身の顔を撮ったカットや、放置されたまま朽ちてゆく登山家の遺体など、思わず息をのむような衝撃的な写真も多い。

 ■野口健(のぐち・けん) 登山家。1973(昭和48)年、米ボストン生まれ。亜細亜大学国際関係学部卒。25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化など環境問題、戦没者の遺骨収集など、幅広いジャンルで活躍している。主な著書に『富士山を汚すのは誰か』『自然と国家と人間と』などがある。

 

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