立川談慶、安定した生活を捨て談志さんに弟子入り 前座暮らしは最高のサファリパーク

★立川談慶

2013.08.30

 「300万円貯めて弟子入り志願。安定した会社員生活が体にしみついていたせいか、前座修業になかなか対応できませんでしたね」

 立川談志さんの18番目の弟子、立川談慶(47)は慶應義塾大学経済学部を卒業後、下着大手メーカー「ワコール」に入社。福岡・佐賀地区の担当として3億円以上のノルマを課されて日夜奔走していたエリートサラリーマンだった。

 だが、3年で退職して「立川流」に入門する。「師匠は父親に一言『殺しはしませんから』。次に『君が落語家になりたいという気持ちを俺は否定できないんだ』と殺し文句ですよ」と振り返る。「師匠についた初日に『要するに俺を快適にすればいい』とハッキリと言われましたね」

 数々のしくじりで見習いから前座になるまで1年2カ月。前座としての仕事が与えられるようになり、重宝がられるまで3、4年。「それまでは食えないので、師匠に呼ばれない時はコンビニでバイト稼業。当時は廃棄弁当やデザートがもらえたんで助かりました」

 「冷蔵庫事件」では破門を覚悟した。談志さんが海外旅行中に冷蔵庫の霜取りをしたがコンセントを入れ忘れ、「師匠の宝物」である高級食材を腐らせてしまった。帰国後の談志さんからファクスが1枚届く。そこには「現状を回復しろ」の書き出しで冷蔵庫の中に入っていたものが列挙されていたが、「伊勢エビ、ヒラメ…」と、もともと入っていなかった高級食材も追加されていた。必死に食材をかき集め、謹慎で済んだ。

 自宅近くの人たちにも世話になった。「銭湯で出会った鰻屋さんにごちそうになったり、酒を飲ませていただいたり。面倒見のいい方ばかり。ホント感謝していますよ」

 談志さんは弟子たちに「近所の農家からキャベツをもらってこい」「たばこをもらってこい」「俺の本を売ってこい」という“むちゃ振り”をするが、ちゃんと理由があった。落語家としての感性を試す「適性検査」のようなものなのだ。「師匠はすべてが理詰め。『ダメな人間を肯定するのが落語だけれど、前座でダメなのはオレは肯定しない』ってね」。すべてが血となり骨になった。

 「噺家だけではなくサラリーマンの世界も、世の中はすべてがむちゃ振り。本当に必要なものを教えていただいたんだなぁ」

 通常5年程度の前座暮らしは、9年半という途轍もない長さだった。

 「あの頃は、今思えば最高のサファリパークでしたね。ワクワクしながら、次に何が起きるかを含めてね。費やした時間と経験が今の自分に役立っていますからね。落語家生活の初期設定…。人生のプログラミングかな」

 ■立川談慶(たてかわ・だんけい) 1965年11月16日生まれ。長野県出身。91年、立川談志に入門。前座名は立川ワコール。2000年に二つ目、立川談慶を名乗る。05年真打ち昇進。慶應大学出身では初の落語家。7月に師匠との思い出、エピソードを綴った「大事なことはすべて立川談志に教わった」(KKベストセラーズ)を出版。入門から談志さんの「Xデー」までがドキュメンタリータッチでサラリーマン向けに書かれている。9月18日に霞が関ナレッジスクエア(東京都千代田区)で「立川談慶 霞が関独演会」を開く。

 

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