宮崎駿監督引退で「ジブリ」どうなる? 後継者とやがて来る正念場

2013.09.03


スタジオジブリの沿革【拡大】

 長編映画からの引退を発表した宮崎駿監督(72)。日本が誇る名クリエイターの引退は、世界でも珍しい長編アニメスタジオ「スタジオジブリ」の今後にも大きな影響を与える。

 「紅の豚」や「風立ちぬ」でも飛行機マニアぶりがうかがえる宮崎監督。スタジオジブリの名称もまた、飛行機と関わっている。

 1984年、「風の谷のナウシカ」がヒットした宮崎監督は、盟友・高畑勲監督(77)と2人で長編アニメ映画を製作する拠点作りにとりかかる。翌85年に設立されたのがスタジオジブリだった。同社の公式ホームページには名前の由来として、「ジブリ」はサハラ砂漠に吹く熱風と紹介されている。第2次大戦中に使われたイタリアの軍用偵察機の愛称でもあり、飛行機マニアの宮崎監督がスタジオ名にした。「日本のアニメーション界に旋風を巻き起こそう」という意図があったという。

 宮崎・高畑両巨匠と、ジブリの顔といわれ一時は社長も務めた鈴木敏夫プロデューサー(65)の“3人4脚”でジブリは巨大スタジオに成長。実際は「ギブリ」と発音する方が普通だが、「ジブリ」の方がしっくりくるほど世間に定着した。とりわけ、興行では宮崎監督作品が頼りで、そのハイレベルな作品を製作するために300人の社員を抱え、常に成功作を送り出さなければならない使命も背負うことになった。

 映画評論家の垣井道弘氏は「長編映画は長い年月と大人数が必要なプロジェクトでクリエイターには気力、体力が必要。立ちゆかなくなれば経営に影響するだけに、引退を決意したのだろう」とみる。高齢となり、長編製作中に病気など万が一の事態になれば経営の根幹を直撃する。若いクリエイターが先頭に立った方がよい、という判断だ。

 これまでもジブリは若手の才能を試してきた。宮崎監督の長男、吾朗氏(46)も監督として2作を送り出し、「借りぐらしのアリエッティ」ではジブリ所属の米林宏昌監督(40)を抜てきした。外部からも「猫の恩返し」で森田宏幸監督(49)を起用。すべての作品でヒットとなったが、宮崎作品に期待される「興収100億円超え」には至っていない。

 「ジブリの不運は、『耳をすませば』の近藤喜文氏が98年に急逝したこと。存命なら文句なしの宮崎監督の後継者だった。『ハウルの動く城』では細田守監督を起用したが途中降板。細田氏はこの挫折をバネに『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』で、ジブリではない日本のアニメ映画の旗手となった。ジブリに残っていれば…」(ベテラン映画評論家)

 だが、ジブリの正念場は先にある、という見方も。映画評論家の安保有希子氏は、「吾朗監督も米林監督も後継者としては経験が足りない。フリーの監督を迎えて映画を作っていくか、上記2人に経験を積ませるか。でも本当に大変なのは鈴木氏が引退する時。誰にジブリを任せるか。今、鈴木氏お気に入りのドワンゴ会長の川上量生(のぶお)氏が有力だ。鈴木氏も宮崎監督引退は想定内だろうし、後継者問題は心配していないと見受けられる」と話す。

 宮崎監督が自らを投影したという「風立ちぬ」の主人公、堀越二郎は、零戦や雷電、烈風といった名機を送り出した。だが戦後はこれも名機「YS−11」の設計に参加。生涯、航空機設計に携わった。長編は引退してもすぐれた短編や中編映画でジブリに新たなビジネスチャンスを切り開くか。

 

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