告井延隆、つかれなど知らない熱き60代 ビートルズをギターだけで再現

2013.12.12


告井延隆【拡大】

 告井(つげい)延隆(のぶたか)さんは1973年の結成以来、息の長い活動をしている名古屋のロックバンド、センチメンタル・シティ・ロマンスのリーダー。加藤登紀子さんのバックでもギターを弾いていたことは知っていたが、全く面識はない。この連載ももうすぐ4年目に突入するが、面識のない人について書くのは初めて。

 どうしてそういうことになったかというと、ぼくの古くからの友人の音楽プロデューサー、磯田秀人さんがプロデュースした告井さんのアルバムを聴いたところ、気に入ってしまったからだ。

 磯田さんと旧交を温めてから取りとめのない話をして一段落した。磯田さんは、おもむろにCDを出し、気に入ったアーティストを見つけると目を輝かせ熱っぽく語る、いつものあの“磯田秀人”を発揮した。

 「センチの告井くんがギター1本でビートルズをやっちゃうんですよ。もうビートルズそのものなんだよ。ビートルズのカバー・ヴァージョンを6000曲コレクションするビートルズ研究家の川瀬泰雄さんも、アコースティック・ギターだけでビートルズの音楽の魅力をこれだけ巧みに表現できるアーティストは世界に見当たらないって太鼓判を押したんですよ」

 ぼくは『THE BEATLES 10』のCDを手にして感慨深く一言を発した。

 「長いねぇ、磯田さんもセンチと」

 センチメンタル・シティ・ロマンスのデビューアルバムは、磯田さんが当時所属していたCBSソニーで1975年にディレクションした。シカゴ、サンタナなどのライブを録音したことはあるが、国内アーティストの録音は初めてだったので、学生時代の同級生、細野晴臣さんにプロデュースを依頼した歴史的なアルバムになった。

 その1年前に磯田さんを知った。ぼくが関わっていた雑誌『宝島』がオイルショックの影響で、晶文社から別の出版社に移ったばかりの頃だ。ぼくは、晶文社の嘱託を続けていて、ジャニス・ジョプリンの自伝の翻訳本を出すにあたって、オリジナルに付いていた薄っぺらいビニールのレコードの権利問題でCBSソニーの担当者に会いに行ったのだ。そこで磯田さんに会った。

 初対面なのに趣味が合った。お笑い、映画、ジャズ、植草甚一…共通の話題が多すぎた。日活ニューアクションとロマンポルノだけは見ていなくて、見るべき作品を列挙してくれた。以来、長い友人になった。

 磯田さんは、この40年近い間に、新しい情報をいつも流してくれた。ぼくの情報源は、ずっと磯田さんと、亡くなったTBSの林美雄さんだった。綾戸智恵さんも横山剣さんも、磯田さんに勧められて、初めて聴きに行った。

 さて、そのCDだ。磯田さんが最初に告井さんがアコースティック・ギターで演奏するビートルズを耳にしたのは、ピーター・バラカンさんのFM番組だった。そしてライブに行き感動し、30年ぶりに告井さんと再会した。話は即まとまり、自主制作していた3枚のアルバムから10曲選んで再録音したCDを制作した。

 告井さんのビートルズは温かい。ビートルズへの誰もかなわないほどの愛情でいっぱいの演奏だ。聴き終わってまた初めから聴き直してしまった。心地よいサウンドが歌詞まで聴かせてくれた。

 告井さん、ピーターさん、磯田さん、ぼく…疲れを知らない60代の面々が年上のビートルズにささげる熱い思いの中で、このアルバムは生き続ける。 (演出家・高平哲郎)

 ■告井延隆(つげい・のぶたか) 1950年12月19日、名古屋市出身。ボーカリスト、ギタリスト。72年に結成された乱魔堂に参加。73年の解散後、センチメンタル・シティ・ロマンスを結成。単独でも加藤登紀子らシンガーのバックバンドのギターとして活躍。2008年からソロ活動も開始。今年2月、ソロ・ギター・アルバム「THE BEATLES 10」をリリースし、ギター1本で全国を回っている。

 ■たかひら・てつお 1947年1月3日東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、広告代理店、編集者を経てフリーに。以後、テレビの構成や芝居・ミュージカルの翻訳演出等。プロデュースした『ヒントン・バトルのアメリカン・バラエティ・バン!』(大阪なんばグランド花月)がいよいよ14日に初日を迎える。

 

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