フィリップ・シーモア・ホフマンが薬物に堕ちるまで 46歳突然死

2014.02.11

 訃報はいつも急にやってくる。アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝き、助演男優賞にも3度ノミネートされたフィリップ・シーモア・ホフマンが2日朝、NYグリニッジ・ヴィレッジのアパートで遺体となって発見されたと聞き、ショックを受けた。46歳の若さ。部屋から多量のヘロインが見つかり、薬物の過剰摂取が死因と推定される。

 22年のキャリアの中で彼が出演した映画が50本超。舞台も20作を超える。野心的で、現代最良のアクターとして尊敬を集めた。

 チョイ役でも異彩を放った。1997年、30歳の時出演した「ブギーナイツ」では、マーク・ウォルバーグ演じる巨根のポルノ俳優に恋するデブで気弱なゲイを演じ、その存在感が注目された。

 私が最初にホフマンに惚れたのは「あの頃ペニー・レインと」(2000年)だった。音楽ジャーナリストを目指しバンドのツアーに同行取材する15歳の少年に、ホフマン演じる「ロックは死んだ」と豪語するロック評論家が、ジャーナリストの心得を教授する。

 「正直だが、情け容赦ないという評判をゲットするんだ」「バンドの奴らはクールだが、俺たちはアンクールだ。でもずっと頭がいいということを忘れるな」、と。

 脇役ながら、静かな低音のドスの聞いた声で真剣に諭すホフマンの深さに打たれた。

 その後「カポーティ」(05年)で、代表作「冷血」で知られる小説家トルーマン・カポーティを演じアカデミー賞最優秀主演男優賞に輝く。恰幅(かっぷく)のいいホフマンが、小柄できゃしゃでカン高い声の同性愛のエキセントリックな小説家を巧みに演じた。身体的特徴だけではなく知性と繊細さ、複雑な気性を見事に捕らえ、性格俳優としての名声を確立する。

 「ミッション:インポシブル3」などの大作にも出演。昨年は「ハンガーゲーム2」でも悪漢を好演した。今年と来年公開予定の同作の続編2作でホフマンに会えそうなのが、せめてもの慰めだ。

 かつて「僕にとって演じることは拷問だ。だが苦しいからこそ美しい物が生まれる」と語っていたホフマン。役に悩み心身を消耗させていたのは、役者の業なのか。

 CBSテレビのインタビュー番組「60ミニッツ」の中で、「酒もドラッグも大いにやったよ」と笑いながら告白していた彼。依存症から立ち直るために22歳の時から死の前まで23年間、酒と麻薬は絶っていたと言う。

 昨年には処方薬依存で10日間リハビリ治療も受けたが、その後再びヘロインに手を出したのが死へとつながった可能性が高い。

 主役であれ脇役であれ、善人役であれ悪役であれ、彼が現れると映画が急に精彩を放った。

 苦悩の中から心血を注ぎ、深い人間性と心の痛みを表現できた希有な才能の主だったホフマン。今はただ喪失感が虚しく残る。 (板垣眞理子)

 

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。