“ギャング4”に対抗できる「均等な著作権法」日本に必要

★角川歴彦さん「グーグル、アップルに負けない著作権法」(角川EPUB選書、1470円)

2014.03.01

連載:ブック


角川歴彦さん【拡大】

 電子書籍マーケットの拡大は、予想と違いかなり遅れている。だが、クラウドコンピューティングで先行し、コンテンツ供給のモノポリー(独占)者としての野望を隠そうとしない、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブックの“ギャング4”は、虎視眈々とわが国の巨大な出版市場を狙っていることは間違いない。著者は現在の日本の著作権法では出版業者は守られず、それは日本文化の破壊に通じると危惧する。クラウド時代の実相と、ギャング4の戦略をリアルに見据え、そうした時代にいかなる著作権法が必要かを示唆して、本書は刺激的である。 (文・清丸恵三郎 写真・瀧誠四郎)

 −−刺激的な本です。反響はいかがですか

 「テクニカル用語も多く、とっつきにくいかと思い、当社の文芸の編集者に読ませたところ、よく理解できたというので安心して出したのです。全体として、前著(『クラウド時代とクール革命』)よりは難しかったようですが、しっかり読んでもらえているように思います。電子書籍だと目にも留めてもらえなかったかもしれませんが、紙の(本の)よさを実感しました」

 −−その電子書籍、市場が広がっていませんね

 「認知度が15%くらい。スマート端末、ライン、SNS、ゲームなどは結構知られてもいるし利用者も多いが、電子書籍となるとガクンと落ちます。音楽や映画を含めコンテンツを利用するものは自然に売れていかない。で、当社は独自戦略で拡販していこうと、3年前からBOOK☆WALKERという電子ストアを立ち上げて拡販につとめています」

 −−現実とタイムラグはあるが、本書の主題である著作権法を整備しないと日本の出版界はグーグルやアップルなどに手痛い目に遭わせられる?

 「極端な話、彼らは自分たちのクラウドでコンテンツを提供します。電子書籍化も自分たちの手でやります。ただクラウド環境はブラックボックス化してあなたたちには関与させないし、その際電子化された書籍の版権はわれわれのものですよ、というようなことを平気で言います。仮にそうなると、出版社は単なるデータ提供業になり、再生産が難しくなるだけでなく、新しい作家を育てたり、辞書や学術書のような日本文化に必要なものを提供したりすることが不可能になります」

 −−で、出版社に映画会社並みの法人著作権が

 「複雑な経緯があり、日本では映画と出版物とでは、法人著作権の強弱が雲泥の差です。しかしデジタル化された世界において、映画も本も音楽もデータとしてインターネット上を流れることに変わりはありません。私どもの主張は『差別のない均等の著作権が欲しい』ということ。現実には著作権法の全面改正は難しそうですが、ある程度認められないと日本の出版経営は成り立たず、ひいては日本文化の存続にも悪影響を与えることになります」

 −−前半に詳しく書かれていますが、彼ら“ギャング4”のパワーと戦略には驚きます

 「マイクロソフトなどウィンテルがパソコンの基本ソフトをブラックボックス化したことで、特許をいくら持っていても日本のパソコンメーカーは彼らの下請化されました。今のままでは、クラウド時代において日本の出版界も同じような状況になりかねません」

 −−今、出版界も変わる必要があると

 「出版界は制度疲労を起こしており、新しい制度を作らないといけない。読者に謙虚に対峙しつつ市場の振興につとめる一方で、コンテンツ業界全体で力を合わせて優れたコンテンツを創り出し、“ギャング4”への対抗力を持つ必要もあります」

■あらすじ タイトルも刺激的だが、内容も劣らず刺激的だ。4章で構成され、初めの3章はクラウドコンピューティングの時代に突入し、主役の座に躍り出たアップル、グーグルなど“ギャング4”と呼ばれるクラウドサービス業者の実像と戦略をリアルに描き出す。

 クラウドコンピューティング時代は、関連業界を否応なく変貌させ、企業を退場させてもしまう。パソコンが端末の一つにすぎなくなり、強盛を誇ったマイクロソフト帝国も斜陽を免れがたくなっているのはその一例だ。

 競争相手を破綻にまで追い込む彼らギャング4は今後とも、傲慢かつ強引に既存コンテンツ業界のコピーライトを奪いに来ると見てよい。一国の、そして一民族の文化そのものといえる出版についてもそうだ。

 これに対し、出版の法人著作権を確立することなしに彼らに対抗できず、日本の出版文化を守ることもできないと著者は主張する。後半第4章は、著作権を巡る著者と5人の識者とのパワフルでインテレクチャルな対談である。

■角川歴彦(かどかわ・つぐひこ) 1943年、東京生まれの70歳。(株)KADOKAWA取締役会長。東京大学大学院特任教授などを務める。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、角川書店入社。情報誌『東京ウォーカー』、ライトノベル『電撃文庫』などを立ち上げ、メディアミックス手法により出版界に新風を吹き込む。電子書籍にも積極的に取り組み、クラウド時代の入り口に立ち、グーグルなどモノポリー者の戦略にいかに日本の出版界、コンテンツ業界が対峙していくかを考察し続ける。著書に『クラウド時代と〈クール革命〉』。

 

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