日本のスポーツ100年 新国立の“これから”を考えて

★後藤健生さん「国立競技場の100年」(ミネルヴァ書房、2625円)

2014.03.09

連載:ブック


後藤健生さん【拡大】

 ソチオリンピック、2020年夏季の東京オリンピック開催決定の余韻が収まらない今、絶妙なタイミングで発刊された。サッカージャーナリストとして500回以上もの競技場へ足を運んだ著者が描く、大正期に建設された外苑競技場から現在に至るまでの競技場の歴史。ここを舞台にしたスポーツの歴史が、迫力を帯びた読後感を醸し出す。 (文・清丸恵三郎 写真・小野淳一)

 ──まさに日本のスポーツ100年史です

 「最初は競技場としての歴史に興味を持って取材、執筆を始めたのです。ただ一方で、学徒出陣などもあり、社会史的なことも入り込んでくるだろうなという予想はあったのですが、スポーツ史に関することがいろいろ出てきて大部の著作になってしまいました」

 ──前身の神宮外苑競技場を含め、国立競技場が日本のスポーツの中心に位置していた証しです

 「野球を除くと、当初、陸上、サッカー、ラグビーなど主要スポーツはここしか会場がなかったので、どうしても絡んでくる。初期にはバレーボールなどもフィールド内で行なわれていましたからね」

 ──なぜ、国立競技場をテーマに

 「物心ついてから、多分500回は国立競技場に足を運んでいると思うのですが、どうして神宮外苑にこういう形の競技場ができたのか、単純にそれが知りたいと思ったのです」

 ──それにしても、ずいぶん細かいところまで調べられた。外苑に裏参道があったとは

 「今度取材して初めて背景を含めて知ったことも多かったです。外苑が表参道から絵画館をセンターラインにしてきれいな左右対称に設計されていたなどその一例。2020年のオリンピックの会場整備に際して、外苑も100年前の形に整備されるといいですね」

 ──神宮外苑競技場は、球技場と陸上競技のトラックが組み合わされた、当時世界の先端を行く競技場だった、と

 「関東大震災もあって予定より遅れるのですが、1924(大正13)年10月に竣工します。実施設計は小林政一という技師が担い、彼は多くの世界の先進的な競技場を参考にして、グローバルスタンダードを先取りして一周400メートルのトラック、球技が可能なフィールド、3万5000人収容という大スタンドを造ったのです」

 ──印象に残るのは現在の国立競技場です

 「戦後に再建された国立競技場は外苑競技場を下敷きにしたものですが、64年(昭和39)の夏季オリンピックの会場になりましたからね。私の場合、メキシコオリンピックのサッカー予選で、日本と韓国が3対3という稀に見る激戦をくりひろげたのを、この目で見たのが最大の思い出。しかし日韓ワールドカップ開催を機に、サッカー専用の大きな競技場が全国にでき、今の若い人にはこうした思い出など希薄かもしれません」

 ──最終章は新国立競技場です

 「陸上競技とサッカー・ラグビーの兼用競技場は、すでに世界レベルで見ると、20世紀の遺物です。そうしたものに1300億とか、1800億円かけるのは愚か。しかも8万人収容の巨大スタジアムをその後、どう使うのか、具体的アイデアもない。今こそ日本人全員が真剣に考えるべきですね」

 ■あらすじ 2020年の東京オリンピックのメーン会場として、再び神宮外苑の国立競技場が用いられることになった。建て替え問題を含め、話題に事欠かないこの競技場の100年史に正面から取り組んだのが本書だ。例えば、幻の1940年大会を含め、3度のオリンピックのたびに、立地場所が外苑ではなく湾岸、あるいは駒沢へと揺れ動いた話。大正期に建てられた外苑競技場は世界の最先端を行くものだったが、いまや陸上競技と球技の兼用競技場は20世紀の遺物だという指摘。また建設される新競技場に関して、今後の社会に負担を残さないものを造るべきだとの指摘も、大いに共感できる。

 ■後藤健生(ごとう・たけお) 1952年、東京生まれ。61歳。サッカージャーナリスト。慶応義塾大学大学院博士課程修了(政治学)。東京オリンピックでハンガリー対モロッコ戦を観戦して以来、サッカーに魅了され、サッカージャーナリストの道へ。世界の競技場を見、国立競技場での観戦を500回余り経験したこともあり、国立競技場の100年史に改めて取り組んだという。主な著書に『世界サッカー紀行』『ワールドカップ1930−2002』『日本サッカー史−日本代表の90年』などがある。

 

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