黒川博行さん“6度目の正直”で直木賞受賞 自身もトラウマ

★「破門」(KADOKAWA1700円+税)

2014.08.16

連載:ブック


黒川博行さん【拡大】

 17年続く『疫病神』シリーズ第5弾の『破門』で第151回直木賞の受賞が決まった黒川博行さん(65)。小紙連載エッセーも手掛けた作家の6度目の候補作がついに栄冠をもたらした。 (文・竹縄昌 写真・宮崎瑞穂)

 −−受賞決定の知らせは雀荘で聞いたそうですね

 「わりとよい手ができているときに、携帯がチリリンとなりました。僕は携帯を持たない主義なんで、カミさんの携帯でした」

 −−7月17日に受賞が決まって、以降はどんなご様子ですか

 「もうこの1カ月はスケジュールがグチャグチャになっていますね。年に1回ぐらいしか上京せんかったのが、何遍も来てますし、今日で東京滞在は4日目です。今夜大阪に帰って、明日からエッセーを2本。全部で10本以上あるんと違いますか。週刊誌連載もあるしね」

 −−6度目の候補での受賞、そのうち本作も含め、3作が疫病神シリーズから選ばれています

 「疫病神シリーズは5作しか出していないのに、そのうち3つを候補にしてもらって、ホントにありがたいことです。運が良かったんでしょうね。こういう主人公2人のキャラクターを作ったことが一番の理由かな」

 −−その2人を生み出すきっかけは

 「映画の『悪名』(今東光原作、1961年)で、勝新太郎と田宮二郎のコンビで、片方がヤクザ、もう片方が堅気というコンビで動く小説は、あまり読んだことがなかったので、こういう感じで書ければいいかなと思いました」

 −−最初の刊行から15年です

 「2人のキャラクターが変わっていってます。最初は桑原と二宮の関係は対等やったんが第2、第3、第4と桑原に偏っていったんです。今回は割と2人とも経済的に逼迫(ひっぱく)していて、そこであるシノギをやって金を得ようとする。だから前作に比べてストーリーが割とシンプルです。いま暴対法や暴排条例で、そういう世界で食えなくなっていますから、その辺りを強調して書いたつもりです。実はこれが売れなければ、シリーズを終えてもいいつもりでいました。今回、結果的に直木賞が決まったので、続編を書くつもりです」

 −−ファンはどれぐらい待てば

 「まあ、2、3年は。でも、ほんとは40代で取れていればと思いますが、70歳ぐらいまでは書いていいと言ってもらえたんかな」

 −−受賞決定当日の記者会見では、落選者に気遣いも

 「僕が受賞した影には落選者の人もおられるわけで、それも数回落選した人はほんとうにつらいだろうなと。僕が落選したときの気持ちを思い出すと、まあ、大変ですよ。また一から書いていかなアカン。直木賞が欲しいのはみんなそうです。また、そのためにあるレベル以上の作品を書き続けていかなければいけない。それに、“待ち会”の雰囲気に耐えられなくて、だから、今回は雀荘で待ちました。受賞して僕はホッとしました。これで2度と候補になることはないですから」

 −−落選のトラウマもあると吐露されてました

 「それは『国境』(第126回)のときです。あのときは落ち込んで、半月ぐらい仕事が手につきませんでした」

 −−30年の作家生活で、お気に入りのタイトルは

 「疫病神シリーズではやはり『国境』が一番でしょう。もう一つは、『蒼煌』(文芸春秋)が好きですね」

 −−作品づくりで心がけていらっしゃることは

 「リーダビリティー(読みやすさ)をものすごく意識して書いてます。リーダビリティーとはなんや、と言われると、キャラクターと思うんです。あとは会話やアクションのテンポ。早く展開するように、ハリウッドのエンターテインメントが勉強になっています。読者を楽しませる、次々にページをめくらせることを意識してました。難しいテーマ性もないエンターテインメントです。徹底的に読者の側に立って、面白い作品を書きたいとずっと思っています。半面、自分が書きたいことは書いていないかもしれない」

 −−夕刊フジの読者にメッセージを

 「読む活動写真というか、読む活劇です。これで、4時間なり、5時間なりを楽しんでいただけたら、本望であります」

 ■あらすじ 拝金主義のヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮のコンビが活躍する『疫病神』シリーズ第5弾。二宮にとってはいつも無理難題を押し付けてくる桑原が疫病神。今回は、映画製作の出資金をめぐる詐欺騒動に巻き込まれる。その被害者が桑原の組の若頭であり、また二宮も私淑している嶋田。2人は詐欺を仕掛けた男を追跡して、ついにはマカオまで飛んでいく。出資金騒動は組同士のもつれとなり、上部団体に反抗した桑原は騒動の落とし前をつけることになるが…。

 ■黒川博行(くろかわ・ひろゆき) 1949年、愛媛県生まれ。6歳から大阪に暮らす。京都市立芸術大学美術学部卒。大阪府立高校の美術教師として勤務の傍ら、小説を執筆。83年『二度のお別れ』が第1回サントリーミステリー大賞佳作。専業作家となり、86年『キャッツアイころがった』が同大賞受賞。96年『カウント・プラン』で第49回日本推理作家協会賞、同時に第116回直木賞候補に。続いて『疫病神シリーズ』第1作『疫病神』『文福茶釜』、『国境』、『悪果』が直木賞候補となる。他に、『落英』『繚乱(りょうらん)』『離れ折紙』など。

 夕刊フジでエッセー「大阪バガボンド」を2003年から07年まで連載(幻冬舎文庫『大阪ばかぼんど』)。妻の雅子さんは直木三十五と同じ高校の同窓。また、今回芥川賞に決まった柴崎友香さんは、黒川さんと中学校の同窓だ。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

毎日25分からのオンライン英会話。スカイプを使った1対1のレッスンが月5980円です。《体験無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。