宮本輝さん『田園発港行き自転車』 どんな人間にもある「縁」の奇跡を物語に (1/3ページ)

★宮本輝さん『田園発港行き自転車』上・下(集英社各1600円+税)

2015.05.07

連載:ブック


宮本輝さん【拡大】

 当代きってのストーリーテラーによる最新作は『縁』の物語。地縁、血縁、仕事の縁…。人間はひとりじゃない。他人に見えても“不思議な縁”で繋がっている。そんな温かいメッセージが心に染みわたる1冊だ。 (ペン・大谷順 カメラ・野村成次) 

 −−富山・入善(にゅうぜん)町の黒部川の堤で小説が動き出したとか

 「右には、雲一つない立山連峰、後には黒部川の急流、左は富山湾、そして目の前には広大な田園地帯が広がっている、という素晴らしい風景でした。9月初旬のまだ暑い日でね。のどが渇いたので湧水で有名だという入善町に立ち寄ったんです。ペットボトルに汲んだ湧水を飲み、黒部川の堤から田んぼに下りたとき、まさしく『自分が求めた場所』に立っていたんですよ」

 −−物語では「自転車」が重要なキーワードになっています

 「僕は小学4年生から1年間、富山に住んだことがあるんですが、夏休みになると、父と一緒に行き先も決めずに田園地帯をサイクリングした。富山の地形は山から海に向かってなだらかな傾斜になっているので、海に向かうときは楽ちんで漕(こ)がなくてもいける。そのときの気持ちよさがパッとよみがえり、『田園発 港行き自転車』というタイトルが浮かんだんです」

 −−黒部川にかかる赤いアーチの「愛本(あいもと)橋」も重要なファクターのひとつ

 「山と平野を分けるあたりの黒部川にある古い橋でね。江戸時代、加賀藩が参勤交代に行くときにも、この橋を通っている。僕が訪れたのは風の強い秋の夜で、とても寒かったけれども、星がきれいに見えましてね。すごくいい橋だな、って思いました。眺めているうち、これは、昔どこかで見たことがあるぞ、ゴッホの名画『星月夜(ほしづきよ)』の景色じゃないか、って感じたんですよ。実はそのときにはもうだいぶ書き進めていたんですが、急遽(きゅうきょ)盛り込むことにしたんですよ」

 

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