宮本輝さん『田園発港行き自転車』 どんな人間にもある「縁」の奇跡を物語に (3/3ページ)

2015.05.07

連載:ブック


宮本輝さん【拡大】

 −−結末と言えば、父親をモデルに30年以上書き続けているライフワーク「流転の海」シリーズもいよいよ完結が近い(全9部の予定で現在、8部を執筆中)

 「若いときから一国一城の主で尊敬もされた人が晩年に落ちぶれて、今晩一杯飲むカネもない、となったらどうなるか。僕はそれを父に教えてもらった。だから、最後を書くのはつらいし、客観的になるのが難しい…。ただし、これは小説ですよ。(9部までの)長い物語を読んでくれた人のためにも、やはり、最後に落ちぶれ果てて死んで行く姿にはさせたくない、という思いはありますね」

 −−若くして芥川賞を取って流行作家となり、間もなく作家生活40年。これまで順風満帆だったのではありませんか

 「とんでもない。芥川賞を取った『次の作品が勝負だ』と思っていましたが、そんなには売れず、病気(不安神経症や結核)になって、働けなくなってしまった。やっと食べていけるかな、と感じたのは30代の後半、『錦繍(きんしゅう)』のころですよ。仕事量でいえば、今が一番多い。作家が一番、脂が乗るのは70代だと思っていますので、これからが楽しみ。後は体力との勝負ですね」

 ■あらすじ 富山の小さな駅に残された1台の自転車−。「秘密」を残したまま自転車メーカーの社長である「父」は急死してしまった。15年後、絵本作家となった「娘」は意外な出会いをきっかけに、父が“残したもの”を辿ることになる。そこには奇跡のような命のつながりがあった。

 富山の広大な田園風景や京都、東京を舞台に不思議な「縁」で結ばれた人々のさまざまな思いが交錯してゆく。

 ■宮本輝(みやもと・てる) 1947年、神戸市生まれ。68歳。追手門学院大学文学部卒。広告会社のコピーライターを経て作家に。1977年『泥の河』で太宰治賞、78年『螢川』で芥川賞、87年『優駿』で吉川英治文学賞を受賞。父親をモデルにした小説『流転の海』シリーズは30年以上書き続けており、現在第8部を執筆中。最新作は『田園発 港行き自転車』。2010年、紫綬褒章受章。

 

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