「太陽」 発言者が主張しない清廉さ 想像力をかきたててくれるシンプルな写真

2015.05.13


「太陽」1963年7月号(平凡社提供)【拡大】

 昨今どうもなじめないのは、色々な分野に詳しいことをさも誇るかのように出てくる、家電芸人、山ガール、鉄オタアイドルなどといった連中。

 そもそもどうでもいいことに夢中になったり、サブカルチャーに入れあげたりすること自体、本来は恥ずかしかったはず。要は、「その分野を伝えたいより、オマエが前に出たいだけだろ!」と感じてしまう。

 そんなことを思ったのは、「太陽」1967年8月号「日本の城」特集を再見したから。この号は当時も持っていたが、小学生時分だから、たぶん親にねだったのだろう。当節は改めて城が静かなブームなのか、落語家や芸能人が城の魅力を、とうとうと語るさまを色々なメディアで目にするが、この号にはその手のものが一切ないのが潔い。

 書き手や写真家の主張でなく、対象である「城の魅力」だけがすっきりと映しだされている。戦闘の際、城内から矢や鉄砲を放つための穴である「狭間(さま)」というのがあることも、有事の際には石垣に開かれた穴門を土砂で内側から埋める仕組みになっていたことも、この号の姫路城特集グラフで知った。写真もシンプル、解説も短めのキャプションのみで想像力をかきたててくれる。

 80年代初頭以降、「FOCUS」を皮切りに、政治家や芸能人のスキャンダルを暴きたてる写真誌が次々に創刊したが、それ以前、写真でビジュアルに伝えるグラフ誌では「太陽」がその代表だったといってよいだろう。

 ビジュアルといっても同誌のトーンはあくまで静謐(せいひつ)、なんなら社会科の副読本にでも使えそうなおとなしめの感じで、毎号「源氏物語絵巻」だの「世界の飛行機」といった特集をしていた。

 時代的には反戦や学生運動が盛り上がってきていたのに、その落ち着き具合はなぜかなと思っていたが、今回、同誌63年7月号「創刊のことば」を見て納得した。「全国の家庭のみなさん!どの家庭にも、ひとつの太陽が要るように、ひとつの雑誌が要ります。(中略)雑誌「太陽」は『きりのない百科事典』であるとともに(後略)」とある。

 そうそう、60年代はどこの家でも百科事典を買うことがひとつのステイタスだった。同誌刊行元の平凡社は世界大百科など百科事典の版元として有名だったんだ。「太陽」はそのいわば増補版との位置づけでスタートしたのであれば、そのまったり感にもうなずけるものがある。 (矢吹博志)

 

 

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