人間の極限状態描く戦記映画『野火』 衝撃光景の連続

2015.08.08


戦場をリアルに描いた「野火」【拡大】

 この夏は、戦後70年を意識した映画が多い。半藤一利原作の「日本のいちばん長い日」(原田眞人監督)が8日公開される。御前会議からポツダム宣言受諾までの24時間を描いた大作は話題を呼びそうだ。

 一方で、全国の小規模劇場で順次、自主公開され、クチコミで評価が高まっているのが大岡昇平原作の「野火」。先の大戦でフィリピン戦線における日本軍の苦しい彷徨いを地を這うように追った戦記映画だ。

 50年前に市川崑監督が、その言い知れぬ死の恐怖をモノクロの陰影で再現した。リメークした塚本晋也監督は高校時代に原作を読み、戦場にいるような恐怖を覚えて企画を温めていたという。

 新たにカラーでリメークされた極限下の兵士の姿は、87分の上映時間がとてつもなく長く感じられた。敗戦が濃くなる中、結核を患い、野戦病院行きを命ぜられる田村一等兵を塚本監督自身が演じている。

 病院からの異臭や、死を嗅ぎつける虫の列、飢餓の極致で人間がとる恐るべき行動など、目をそらしたくなる光景の連続だ。だが、作品の発する執念のようなものが伝わり、席を離れられない。田村一等兵が戦場で訥々(とつとつ)と漏らす言葉が心に忍び寄り、映像ならではの叫びが伝わってくる。

 塚本監督の名を映画界に知らしめた初期のSF映画「鉄男」(89年)は、ある朝、男の頬から金属片が出てくる変身の恐怖だった。「野火」は人間そのものが作り出した恐怖である。 (中本裕己)

 

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