(28)デス電所

2010.11.16


取材に応じた作・演出の竹内佑と音楽・演奏の和田俊輔(右から)【拡大】

 劇団紹介コーナー「ピンスポ」第28回は、“お客様に楽しんで帰っていただくためならば何でもやります!”を合言葉に、歌・ダンス・コント・映像・生演奏といった様々なエンターテイメント要素を作品にふんだんに取り入れるだけでなく、時には女優に血糊を吐かせたり、女優の顔にマヨネーズを塗りたくるといった悪ノリ(?)まで!ライブならではの面白さをとことん追求し続けている「芝居流通センター デス電所」(http://www.deathtic.com)を紹介します。

 来年度より、その活動拠点を大阪から東京に移すことを発表したデス電所。本公演以前からすでにもう東京での公演を何度も行ってきているだけに“満を持しての東京進出”と言っていいだろう。そんなデス電所作品の魅力は、上記のような種々のエンターテイメント要素だけではない。ある意味正反対の、文学性が高いブラックで混沌とした物語…人間誰しもが持つ暗い本質部分をえぐったサスペンスホラーである! 死がすぐ隣りにある“怖い物語性”と“華やかなエンターテイメント要素”が融合したカオス空間…「おもしろいと思ったことを死ぬほど自由にやる」という作・演出の竹内佑の信念は、他の劇団とは一線を画したものとなっている。…ちなみに、デス電所という劇団名はゴロでつけたという。決して怖い劇団ではないのでご安心を(笑)。

 26日〜28日に大阪HEPHALLにて5公演&来月12月15日(水)〜19日(日)に中野テアトルBONBONにて8公演、「空洞メディアクリエイター」の上演を控えたデス電所の竹内佑と和田俊輔(音楽・演奏/舞台「音楽舞踏会黒執事〜その執事、友好〜」の音楽、映画「昆虫物語みつばちハッチ〜勇気のメロディ〜」の編曲アシスタント他)が2日間だけ東京にやって来るという情報をキャッチ。2人を直撃した。

■名古屋での経験で軸がぶれずにいられる

 大阪から東京に活動拠点を移すことを公式に発表したデス電所。そのスタートとも言うべき劇団の前身は、実は名古屋が拠点であった。

 「僕は高校演劇出身で、その頃から人間の暗い本質をえぐった何だか酷いものを作っていたんですけど(苦笑)、でも何を間違ったか、高校演劇の中部大会までいって、さらには脚本賞までもらってしまったんです! 名古屋にスゴイ奴がいるなんてウワサされたりもして、『これだけ期待されているんだから、もう公演をやるしかない』と思ってしまったわけです(笑)。で、高校時代の仲間たちと劇場を借りて公演をしたんですけど、劇団名をどうするかという話になって『デス電所』とただ単にゴロでつけて…なので、デス電所はある意味では名古屋がスタートの劇団なんですよ。今思えばですけど……あの経験があったからこそ、12年経った今でもやりたいことや軸がぶれずにいられるんだと思いますね。そしてその後、近畿大学の仲間と新たに劇団を立ち上げることになって、その劇団名を同じデス電所にすることにしたのも、やっぱり名古屋での経験を引き続き活かしていきたいという想いがどこかにあったからだと思うんです。まあ、一部の人たちから“名前からして、あそこは怖い劇団”と思われるなんて、その時は考えもしなかったんで(笑)」(竹内)

 「怖い劇団と思われるようになったのは、何も劇団名のせいだけじゃないんですけどね。彼の描くストーリーが、心の弱い人や性格が悪い人が多かったり、悪口を言ったり裏切ったりな上に、殺し合いのシーンが連続して、さらには女優が血糊を吐いたり…こちらサイドとしてはサービスのつもりでやってるんですけどね(笑)。特に劇団結成当初はそういうのが多かった。…って、最近の作品にも、生演奏の音楽が流れる中、無言で15分くらい殺し合いを続けるシーンがあったりしたか(笑)……でも、まあ、演劇ファンの方たちにもようやく認められてきているので嬉しい限りです!」(和田)

■とにかく詰め込めるだけ詰め込む

 デス電所作品のエンターテイメント性は、全て“お客様に楽しんで帰ってもらいたい”という想いからきているという。

 「結成当時、世の主流としては会話劇が流行っていたんですよ。でも、僕はそれが正直ちょっとつまらないと思ったんですよね。例えば、映画を見に行ったら映画でしか見られないような爆発等の特殊技術を駆使したものが見たいと思いません? それと同じで、舞台だったら舞台でしか味わえないようなライブ感を得られるもので、うちはお客様を楽しませていきたいなと。だから、僕らの芝居では歌やダンスはもちろん、スクリーンに映像を映し出したり、ピアノの生演奏したり、大喜利コーナーを設けたりなどなど、ショーとしての演劇っていうか、とにかく面白いと思える事を詰め込めるだけ詰め込む! 女優に血糊を吐かせたりするのもその延長線上のものでしかないんです(笑)。そして、そんな風に様々な要素を盛り込むということもあって、うちの作品は1つ1つのシーンがとても短かいんですよ。2分か3分ぐらいで、すぐに場面転換しちゃいますね。それでも芝居が長いと思ったらダンスや歌で表現したりする(笑)。だから、よくアンケートに『こんな舞台、今まで観たことなかったです』ってメッセージがあったりするんですけど、これはもう、うちにとって最高の褒め言葉です! …あ、でも、アンケートの半分以上は『和田さんがカッコよかったです』というもので、役者陣はそのメッセージを見る度にへこんでいますけど(笑)。カッコいい男というのは、大阪でも東京でも変わらないってことがよーく分かりました、アンケートのお陰で(笑)」(竹内)

 「カッコいい僕だけでなく(笑)、生演奏ならではの魅力もぜひ楽しみに来てほしいですね!」(和田)

■“悪い事をすると痛い目に合う”

 先に述べた通り、デス電所の魅力はその華やかなエンターテイメント要素だけではない。人間の暗い本質をえぐるサスペンスホラーという、ある意味対極のストーリー展開も大きな魅力となっている。

 「ホラーと言ってしまうと、たいていの人が引いてしまうと思っていたので、これまであまりうちの作品をホラーと言ってこなかったんですけど……今では開き直って、“うちの作品はサスペンスホラー”だと言い切ってます(笑)。元々ホラーが好きですしね。ホラーにも色々なジャンルがあって、幽霊やゾンビものもあれば、殺人鬼ものもある。サイコサスペンス風のホラーもあればコメディー風のホラー、さらにはスラッシャーっていうものもある。意外と幅広いんです(笑)。ホラーというものを深く考える人がそんなにいないでしょうから、言われるまで気付かないでしょうけど…古今東西のホラーものやサスペンスものって、大概道徳的なテーマだったりするんですよ、実は。《お父さんお母さんを大切にしよう》とか《ご先祖様をちゃんと供養しよう》とか。そういったことが守られなかったからこそ、恐怖に襲われるという(苦笑)だから僕も、非常に道徳的なテーマをいかに道徳的じゃなく描くかというところに命を懸けてます。キレイ事を言うよりも、“悪い事をすると痛い目に合う”っていう、その痛い目を実際に芝居で見せてやろうと(笑)。まあ、でも、僕の本はそれだけじゃないんですけどね。細かいところでは、状況設定やセリフ回しに、古今東西の映画や漫画・小説のパロディーだったり、オマージュを捧げてるところが随所に盛り込まれているんですよ!」(竹内)

 「でも、それはうちら劇団員にも、まぁ伝わらないこと(笑)。もっと分かりやすいところを使えばいいのにって思ってます。時々、それを分かってくれた観客のアンケートを見て、彼は1人でニコッとしています(笑)。うちの作品はそういう楽しみ方もあるということで」(和田)

■もっと多くの人に愛される劇団を目指して

 本公演は大阪で5公演、そして東京で8公演行われる。なお、大阪公演では各公演終了後にアフターイベントが、そして東京公演でも各公演終了後にアフタートーク(鄭義信、赤澤ムック、バッファロー吾郎・木村&天津・向他のゲストがラインアップされています)が催される。まさに1つの節目に相応しい豪華さだ!

 「僕たちの芝居って、正直好き嫌いが両極端に分かれていたんですよね。でも、芝居をやる上でやっぱりより多くの人に観てもらいたいし、楽しんでもらいたい。お客様との壁を取っ払いたいんです。だから今回、初めての試みとして、僕たち1人1人をもっと知ってもらうために、大阪ではアフターイベントとして劇団員が日替わりで持ち出しイベントをすることにしました」(竹内)

 「よく考えたら、これまで自分たちの素の部分を出す機会がほとんどなかった。役者もアピールしていかなきゃダメだと考えていますから、今回のアフターイベントはいいキッカケになると思います。もちろん、これで“大阪さよなら”にはなりませんよ(笑)。もっともっと多くの人に愛される劇団を目指していくためのアフターイベントです!」(和田)

 「…って、これじゃあ、公演後に注目ってことになっちゃいますよね(笑)。作品にももちろん期待して下さい。本公演のストーリーは、アルコール中毒の女とギャンブル中毒の女といじめられっこの男が出会うところから始まり、お互いを必要として助け合いながら、世界に立ち向かっていくというものです。…って、こういう風に言うと、すごくいい話ですよね(笑)。この話を書こうと思ったキッカケなんですけど…戸籍上は生きていることになっていたけど、本当は亡くなってたという事件に触発されました。年金を何年ももらっていることの恐ろしさもそうですし、中には死体と何年も暮らしてたって人もいた。それってもう、完全にホラーじゃないですか。壁の向こうに死体があるのに飯食ってたり、周り近所にはおじいちゃんは元気ですよって言ったり(苦笑)。そういった心の歪みを、僕ならではの切り口・演出で見せたいと思っています!」(竹内)

■勢いづけるための8公演

 最後に本公演に向けての意気込みとコメントを頂いた。

 「劇中はずっとドキドキしていると思いますね。終始、芝居から目が離せないぐらい緊張感が絶えないんじゃないかな。今回は東京で8公演行います。“来年から東京でやっていくぞ!”と勢いづけるための8公演です。この公演で地盤をしっかりと固めたいですね。ずっこけないようにしないと(笑)」(和田)

 「隣にお客さんがいて、目の前で役者が芝居をしていて、生演奏がある…そういった日常生活にはない空間・時間をみんなで共有したと思っています。家でDVDを観るのとは一味も二味も違いますんで。その充実感には絶対な自信がありますから。ぜひ、劇場ショック(笑)を受けに来て下さい! それから、どこへ行っても通用する和田のカッコ良さというものを生で観に来てください(笑)」(竹内)

芝居流通センター デス電所「空洞メディアクリエイター」

【日程・会場】来週26日(金)〜28日(日)5公演 @大阪大阪HEPHALL/来月12月15日(水)〜19日(日)8公演 @中野テアトルBONBON

【作・演出】竹内佑

【音楽・演奏】和田俊輔

【出演】山村涼子、丸山英彦、田嶋杏子、豊田真吾、福田靖久、竹内佑 他

【あらすじ】空洞が開いているから覗いてみる。見る見る見る。空洞の向こうにあるのは夢か希望か絶望か。それ以外か。たとえば蛸か。はたまた花か。空洞の中にいるのは誰だ。誰もいないのか。誰かがいるのか。たとえば私か。私がいたとか。空洞を覗くと暗闇から私がこちらを覗き返していた物語。映画に読書に恋愛に仕事。スポーツだ! スポーツで入り込んだ空洞の中で私は目撃する。誰かが誰かを痛めつけているところを。誰も見ていないと思って。誰も見ていないなら。いっその事! ハイ、見てました。私、見てました。えらいものを見てしまった。脱兎! デス電所がきっかり7ヶ月ぶりにお贈りする暗闇覗き込み型サスペンスコメディ。芝居中に役者と観客がチョコレートを舐める、いわゆるチョコレートタイムシステム導入!皆様、各自好きなチョコレート持参でお越しください。(なお、劇場内での飲食はできません)

【サイト】http://www.deathtic.com

■取材先劇団募集

 「ピンスポ」は取材先劇団・ユニットを大募集中です。詳細は本コーナーをプロデュースする、コンテンツプロダクション・株式会社ルートデザイン公式サイトまで! http://contents-pro.com

■チケットプレゼント

 芝居流通センター デス電所「空洞メディアクリエイター』の11月28日(日)17:00〜(@大阪HEP HALL)&12月15日(水)19:00〜、17日(金)14:00〜、18日(土)19:00〜(@中野テアトルBONBON)に各1組2名様の計4組8名様をご招待致します! お申込は演劇ライフ(http://engekilife.com/)のプレゼントコーナーより。 

次回(第29回)の掲載は11/30(火)です。お楽しみに。

 

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