 評価が真っ二つに分かれる井上社長。三木谷社長とのバトルの行方が注目される |
そんなヒロシに襲われ〜。楽天から経営統合を持ちかけられ、極めて旗色の悪くなったTBS。「一文無しになってもやる」とやる気満々の楽天・三木谷浩史社長(40)を迎え撃つのは、井上弘社長(65)。極めて順当にトップに上り詰めたと評判の井上氏だが、社内では意外な素顔もささやかれる。さて、どちらの“ヒロシ”に軍配が上がるのか。
「これまでは社内でも『何でこの人が?』という人が社長になることも多かったが、井上さんは経営を任される人の王道を歩み、満を持して就任した人」(同局OB)
井上氏は昭和15年、茨城県生まれ。38年に東京大文学部を卒業し、TBS入社した。「報道・ドラマのTBS」と呼ばれた名門テレビ局にあって、テレビ営業局長、編成局長と畑違いの道を歩んだ。だが、常務、専務、副社長などとんとん拍子に駆け上がり、平成14年に社長に就いた。
長く営業・編成など局の要の部門を歩み、早くから社長候補と目されてきた。経理に配属されると、仕事をこなしながら30代に税理士試験に合格。社内外から「生え抜きのテレビ屋では珍しく、視聴率以外の数字にも強い」と評される。
一方で、テレビ編成担当時代、低視聴率で打ち切りが検討された科学啓蒙(けいもう)番組を、部下の情熱に応えて存続させるなど、人情に厚い面もある。
オウム真理教ビデオ問題で局の存亡が危ぶまれる中、平成8年に急遽(きゆうきよ)登板した砂原幸雄前社長と二人三脚で社内改革を推進。民放初の社内分社化、BS(放送衛星)デジタル放送など新メディア立ち上げ、プロ野球・横浜ベイスターズの買収など、局の新生に向けて陣頭指揮を執った。
趣味は読書で、「源氏物語」(原文)、フランスの歴史学者ブローデルの大著「地中海」を読破する本格派だ。
硬軟両面でしたたかさを見せる井上氏だが、三木谷氏を向こうに回して勝機はあるのか。
同局OBは「井上さんは東大人脈で経済界には顔が広い。今回も諸井虔さん(太平洋セメント相談役、TBS企業価値評価特別委員会委員長)ら、先輩後輩と相談しているだろう」と話している。
ただ、諸井氏は今回の経営統合について、三木谷氏に当初理解を見せているだけに、不安定要素はある。加えて、井上氏の手腕を見守る同局の現役社員は、社内の雰囲気をこう伝える。
「最初からエリート街道を歩んだ井上さんは、制作とは縁遠いので現場のスタッフにはあまり慕われていない。強烈なリーダーシップを発揮するタイプでもない。社員からは総スカンだったベイスターズの買収や、もともと他局に比べて強かったセクショナリズムに拍車をかける分社化など、社内に諮る前に上層部で決めてしまって、事後報告というパターンが多い。今回もそうなるのではないか」
突然の“黒船来襲”に、社員にも厭戦(えんせん)感が漂っているのも事実だ。
30代の男性社員は「ついに来たか、という感じ。3年ほど前、フジテレビに買収されるというウワサがまことしやかに流れた。同業者に買収というのはすごく恥ずかしいので、それに比べたら楽天に助け舟を出されるのはまだ全然ましだ」。“井上丸”からは、ねずみが逃げ出している。
ZAKZAK 2005/10/20