今でこそ、テレビ、映画といろいろ出てますけど、僕が役者で食べられるようになったのは35歳ですから。遅いですよね。それまで僕はアングラでやってましたから、食べられるはずがない。
23歳で唐十郎さん=写真下=の状況劇場に入って、34歳まで12年やってて、全然金がなかった。
だから、それはもう、ありとあらゆるバイトやりましたね。測量とか、道路のドブさらい、居酒屋の板前に、バキュームとか、とにかくもう何でもやったね。
それが34歳のときに、柄本明さんに声をかけていただいて、劇団東京乾電池の事務所に呼んでもらったんですよ。それからです。僕はホラ、ちょっと変わってるからっていうんで、テレビとか映画の仕事なんかもらえるようになったんですよ。
それまでは、もうガリガリにやせててね、体重56キロ、ウエスト53ぐらい。女もののジーンズがはけたもんね。それこそ栄養失調状態ですよ。
それがね、初めて、テレビドラマのロケいったとき、弁当が出てきて、「え? いくらですか?」って聞いたら、タダでいいっていうじゃない。ビックリしたねぇ。
「え? くれるんですか?」って聞いたら、「どうぞ召し上がってください」っていうじゃない(笑)。「うわ〜うまいな〜」って思ってね。
だって、それまで“状況”では、ノリ弁だってごちそうだったんだから。それが幕の内弁当に、しかもお茶まで付いてくるんだから(笑)。
そんなんだったくせに、それから何十年もやってると、「なんだよ、こんな油もん食えねぇよ。オレはそこらのソバ屋行くよ」なんて文句いったりしてね。
だからね、ときどき反省するんですよ。あのとき初めてもらったロケ弁の感動を忘れちゃいけないってね。
あれから、もういろんな作品に出た。映画は100本ぐらい出てるかな。それとは別に、Vシネマにも30〜40本出てたしね。テレビだけでも、300本ぐらい出てると思う。それに舞台も加えたら、ざっと全部で500本ぐらいになるんじゃないかな。
こんど、11月1日から10日まで、20年前に旗揚げメンバーとして加わった新宿梁山泊の舞台「風のほこり」(東京・浅草木馬亭)をやるんですよ。14年ぶりです。
なんといっても唐十郎さんの書き下ろしの本だし、今年はもうけっこう稼いだから(笑)。お金とはちょっと関係ないところでやろうじゃないかと。
唐さんのお母さんの実話なんですけど、座長と劇団員の2人しかいない奇々怪々な一座の物語。日本のシェークスピア、唐十郎が書いた本ですからね、そりゃあね、どのセリフもすばらしいですよ。(つづく)
■むさか・なおまさ 俳優。1954年、東京都生まれ。52歳。武蔵野美術大学彫刻科大学院中退。コワモテの個性派俳優として活躍中。
ZAKZAK 2006/10/31