 タトゥー隠しのテーピングが裏目に…。2回戦であっけなく敗退した山本KID |
来年の北京五輪への出場をかけた天皇杯全日本レスリング選手権大会にプロ格闘家を休業した山本“KID”徳郁(のりふみ)(29)が登場。男子フリースタイル60キロ級に登場したが2回戦、わずか16秒であっけなく敗退。自ら「神の子」を言い放っていたKIDは実際は紙より弱いただの選手だった。その神の子効果をアテにした周囲は、まさかの惨敗に蒼白(そうはく)。KIDを五輪の目玉にしようとしたシナリオはもろくも崩れ去った。
KID惨敗に顔面蒼白だったのが、この大会を放送した日本テレビ。これまで女子レスはテレビ東京、天皇杯はNHKが放映していたが、半ば“強奪”する形で、レスリングの完全放映権を獲得した。
いまや、テレビ局にとってスポーツイベントは金のなる木。プロ野球の原巨人没落による視聴率低迷を打開するために、日本テレビはハンカチ王子こと斎藤佑樹とともに、北京五輪をめざす山本KIDを視聴率獲得の2本柱構想として据えたのだ。昨年夏のボクシングWBA世界ライトフライ級タイトルマッチ・亀田興毅×ファン・ランダエタ戦が42.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高視聴率をマークしたことで、大成功をおさめたTBSに続く二匹目のどじょうを狙ったのだ。
ところが、結果は見事なまでの惨敗。『神の子、北京五輪への道』というシナリオが完全に狂わされた格好だ。
しかも、今回の敗因がタトゥーにあるというから、笑うに笑えない。KIDのタトゥーは両腕と腹部全体に入っている。国際レスリングルールで、タトゥーは認められているが、日本ではまだまだ異質。欧米ではファッション感覚があるが、日本では「入れ墨」のイメージがつきまとう。実際、02年サッカーW杯で来日したベッカムは、日本の国民感情に配慮して上半身のタトゥーを長袖シャツで隠したほどだ。
アマチュアで最初にタトゥーを入れたある選手は、「レスリングがもっと発展して若い人が目を向けてくれればという思いでタトゥーを入れた。しかし、日本ではやはりまだまだ低く見られている。実際には大学や会社などの『顔』として出ているとそうはいかないこともある」と話す。
ましてや、今大会は年に一度の日本一を決める「天皇杯」。KIDはタトゥーを隠すために、ひじから下にテーピングを巻いて出場した。
「誰の指示でもない。彼の意志で巻いた」と日本協会・高田裕司専務理事(52)。KIDなりに考えた“気遣い”だったが、あえて隠したタトゥーが敗因になってしまった。
互いの身体をつかみ合うレスリングでは、テーピングがあれば、それがとっかかりとなり、技がかけられやすくなる。汗ですべるはずが、テーピングが滑り止めになるのだ。
2回戦の相手はアテネ五輪で銅メダルを獲得した井上謙二(30)。ひじから下を取る「巻き投げ」を得意とするが、この井上も右肩痛で万全な状態ではなかった。KIDは、この井上にテーピングで滑らない腕をあっさりと取られ、わずか16秒でマットに叩きつけられた。おまけに右ひじを負傷し、「後方脱臼で全治3、4カ月」との診断が下った。
高田専務理事は、「何も付けていなければ汗で滑ることもある。テーピングの影響は多少はあると思う」と話した。もし、テーピングをしていなければ、違う展開になっていたかもしれないのだ。
3つ上の姉でレスリングでアテネ五輪をめざした美憂さんによると、KIDは「『痛いよう』と悔しがっていた」という。しかし、本当に“痛い”のは日本テレビ。タトゥーひとつですべてが水の泡になってしまった格好だ。
★6月の全日本選抜復帰は…
惨敗スタートとなった北京五輪への道。気になるのが今後だ。今大会は敗退したが、8強には残ったため、6月に行われる全日本選抜に出場できる。これに優勝して全日本の勝者とのプレーオフに勝ち、9月に行われる世界選手権(アゼルバイジャン)でメダルを獲得すれば北京五輪出場が内定する。
故障した個所は診断の結果、右ひじの後方脱臼で全治3、4カ月。
76年モントリオール五輪金メダリストで日本人として初めて国際連盟の殿堂入りを果たした高田専務理事は「2週間は右腕を固定。安静にしないといけない。でも、その後は動かさないと固まってしまう故障なんです。6月の大会には間に合う。今後のことは拘束できないが、ぜひともアマとして続けてほしい」とラブコールを送った。
またプロ側のK−1運営会社(FEG)・谷川貞治社長(45)は「こちらとしてはこの試合にはギャラは1円も出していません。でもこれではKIDが強いか、弱いかわからない。こちらとしては帰ってきてほしいが、レスリングにこれだけ貢献したのは、プロ選手はKIDが初めてだ」とKIDの気持ちを優先することを示唆。果たして神の子のリベンジの舞台は?!
ZAKZAK 2007/01/29