 職人の世界にすっかり魅せられた山口智子 |
かつて“連ドラクイーン”として君臨し、現在も多数のファンを持つ女優、山口智子(42)。最近はドラマや映画から遠ざかっているが、その代わり、美術や工芸を扱うドキュメンタリーに熱心に取り組んでいる。“女王”は何に目覚め、どこへ向かうのか−。
「職人の方々は無口と思われているけど、実は宝物のような言葉を持っている」
そう目を輝かせる。
ガラスペン、江戸小紋、江戸木箸−。現代に伝わる日本の職人技を紹介する『山口智子 手わざの細道』(テレビ東京系、4月1日午後4時)は、自らプロデュース、取材を行った意欲作だ。
「もともと体育会系。不器用で集中力もないし、美術や工芸のことは、全然わからなかった」というが、転機は2年前。
テレビの仕事で、後期印象派の画家・ゴッホに影響を与えた浮世絵の精緻な技を見て、「一枚の絵にトップ級のプロが集まり、自分をさらけ出している」と感動した。
美術がテーマの番組に積極的に取り組むうち、身近な東京・浅草近辺に優れた職人たちがいるのを知り、訪ねるようになった。その経験が今回の番組につながった。
「誰も、私が女優だってことは気にしていなかった。彼ら自身が最高のエンターテイナー。私なんて、ひよっこです」
自宅から持参した江戸桶の金魚鉢、身にまとった鮫小紋柄のワンピースからも、職人たちへの敬愛ぶりがうかがえる。
番組では、「作る物を手にする人がいる限り、向上していくのは当たり前」という職人たちのストイックな姿勢に胸を打たれ、後継者不足の問題も目の当たりにした。
取材ノートはメモやイラストがギッシリ。「目がなにより大切。スーパーでブルーベリーを買って、いつも冷蔵庫に入れておく」(ガラスペン職人の佐瀬勇氏)といった言葉まで記されている。
「私の健康の秘訣は、自分に正直なこと。食べたい時に食べ、飲みたい時に飲む」と屈託なく笑うが、職人の中には、それを超える“強者”も。
番組のインフォマーシャルで対談した藍染めデニムのトップメーカー「坂本デニム」(広島県神辺町)の坂本恭士会長は80歳近い高齢で、「3日に1日は好物の肉料理を食べる」というバイタリティーの持ち主だ。
番組作りは、自身のルーツにふれる旅でもあった。取材で訪れた東京・深川は、『奥の細道』の松尾芭蕉の「芭蕉庵」があった土地。この庵を提供した弟子で庇護者の杉山杉風は祖先にあたる。
実家は栃木県栃木市の老舗旅館「ホテル鯉保」=一昨年に廃業=だが、旅館の女将をやっていた祖母に幼いころから厳しくしつけられた話は有名だ。その祖母にプロデューサーとしての自身の姿が重なるという。
音楽をバンドネオン奏者の小松亮太に依頼したことにふれ、「お座敷で『三味線弾いて』って言うのと同じノリ。旅館を継ぐのが嫌で女優になったのに、気づいたら同じことをしている(笑)」
夫の俳優、唐沢寿明(43)は「遠くから見守ってくれているのか、無関心なのか(笑)。でも、彼も『職人』なんだと思うようになった」。
学んだことを、自身の女優業にどう生かすかは、「まだわからない。でも、今は職人の世界を伝えるのが楽しいんです」
ただ、女優・山口智子の“後継者”はいない。“演技の職人”として飛躍する日も楽しみだ。
■やまぐち・ともこ 1964年10月20日生まれ。栃木県栃木市出身。86年デビュー。88年のNHK連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』のヒロイン役で一躍人気者に。多数のドラマ、映画に出演。
ZAKZAK 2007/03/29