公開中の映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」(新城卓監督)は、太平洋戦争末期、敗戦濃厚だった日本軍に命じられ、国を守るため尊い命を犠牲にした若い特攻隊員の物語だ。彼らが母のように慕った鹿児島・知覧町「富屋食堂」の鳥濱トメさんから直接、聞いた実話を石原慎太郎東京都知事(74)が映画化。脚本・製作総指揮を手がけた。
特攻隊員を断腸の思いで見送った女たちを女優陣はどう演じたか。
トメさん(岸惠子)の二女で特攻隊の奉仕隊・礼子役は、平成元年生まれの女優、多部未華子(18)=写真。
「戦争も特攻隊も知識がなかったので、映画や本を参考にしました。本は父が“こっちは心情が描かれている”と次々に持ってきてくれまして。もう、手当たりしだいです。10冊以上? そうですね。時代背景や人々の心を学びました」
しかし、頭で理解したつもりでも、撮影現場は予想外の展開ばかりだった。
「基地が爆撃を受けるシーンは芝居ではなく、本気で逃げました。安易な気持ちでできるシーンは、ひとつとしてありません。本当に死ぬんじゃないかな、と思いました」
火薬が埋め込まれている木、煙の出てくる方向、爆破のタイミングの説明を受け、「このルートを通って、この木に隠れる…」と、冷静に何度もシミュレーションしても、いざ本番となると、煙で視界をさえぎられ、整地されていない地面に足を取られた。「転んだ場所に火薬があったら…」という恐怖心が常にあった。
当時と同じ衣装に身を包むと、ひときわピンと張りつめた気持ちが出演者に広がったという。それでもカメラがまわっていないときは、「岸さん、隊員のみなさん、なごやかでいい雰囲気でした」と、幸せに暮らせる“今”を噛みしめた。
二つの印象深いシーンがある。一つはトメさんが特攻隊員から預かった手紙を投函するところを憲兵に見つかり、憲兵に立ち向かうシーン。
「撮影現場に居合わせていたのに、本編を見て、改めて、岸さんのセリフと体全体から出るオーラが心にグサっと突き刺さりました」
そして、「蛍になって再び帰ってくる」と話す19歳の河合惣一軍曹(中村友也)には、「年齢が近いこともあり、感情移入してしまって、(涙がこみあげ)ウッときました。同世代の方にもぜひ注目してほしいですね」と話した。
=つづく
■たべ・みかこ 女優。1989年1月25日生まれ。東京都出身。現在、東京女子大学1年生。2005年度、映画「HINOKIO」(秋山貴彦監督)、「青空のゆくえ」(長澤雅彦監督)で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞。7月公開予定の映画「西遊記」(澤田鎌作監督)、映画「こわい童謡 表の章」(福谷修監督)と、出演作がめじろ押しのホープ。
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ZAKZAK 2007/05/15