小説「テロリストのパラソル」で知られる直木賞作家、藤原伊織(ふじわら・いおり、本名・利一=としかず)さん=写真=が17日午前10時14分、食道がんのため東京都内の病院で死去した。59歳だった。大阪府出身。葬儀は近親者で行う。喪主は妻、真知子(まちこ)さん。
藤原さんは大阪府立高津高から東京大学文学部に進み、1973年に電通に入社。ソフト開発事業センター部長などを歴任。在職中から小説を書き始め、85年の「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞しデビュー。95年の「テロリストのパラソル」では、かつて全共闘闘争に身を投じた男女を描き、江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞し、フジテレビ系でドラマ化された。
2002年に電通を退社し、作家活動に専念。「雪が降る」「てのひらの闇」などを出版した。
05年には、小説誌「オール読物」6月号(文藝春秋社)に「がん発症始末」と題して寄稿。「食道がんを発症し、5年生存率が約20%と告知された」と明かしていた。
その後、夕刊フジの取材に「余命は3、4年」と予測。1日5、6箱吸っていたショートホープはやめたが、麻雀の回数は増えたと、無頼派ぶりは変わっていなかった。
取材に対し「夕刊フジの読者は、サラリーマンでしょう」と唐突に話した藤原さん。「早期発見が一番。検診だけは、まじめに受けるように」「がん保険は入っておいたほうがいい」と読者にアドバイスしていた。
直木賞作家の逢坂剛氏の話 「随分前から入退院を繰り返し具合いが悪いとは聞いていたが…。最近は小康状態が続いていただけに急なことでショックだ。最後に遭ったのは昨年の文壇のパーティー。体調が悪い中、彼は非常に恬淡としていて、そんな素振りを見せることはなかった。今思うと、別れを言いに来たのだろうか…。人間あそこまで(生き死に関して)達観できないもの。さばさばして潔い晩年だったとは思うが、もう少し彼の作品を読みたかった」
ZAKZAK 2007/05/17