 現場前で、訴えを起こした住民が手にする完成予想スケッチ。右上が恐怖の「まことちゃんの塔」 |
漫画家の楳図かずおさん(70、写真右円内)が、東京・吉祥寺の高級住宅街に建設中の自宅が物議を醸している。壁面が幅60センチの赤白ストライプでカラーリングされ、屋根ではまことちゃんが「グワシッ!!」。近隣の一部住民は、景観を壊すとして建設差し止めを求め仮処分申請するほど怒り心頭なのだ。
「あんな建物は色彩の暴力であり形の暴力」
こうまくしたてるのは、仮処分を求めた住民2人のうちの1人。楳図さん側から提出されたデザインのスケッチを手に、「あの方にとって赤白はトレードマークかもしれませんが、ここはテーマパークではありません。心に赤と白のペンキを塗られた気分です」と怒りは収まらない。
 渦中の楳図邸。施工主の欄は「U様」とあるが、「極めて異例の措置」(業界関係者)とか |
屋根に取り付けられる予定の「まことちゃんの塔」も火に油を注いでいる。高さ2メートル、直径1.5メートル(いずれも推定)の円筒型で、正面に直径30センチほどのまことちゃんの目をイメージした丸窓が設置される。楳図さんがそこから外を眺め、物思いにふけるという。
「飾りの煙突かと思っていたら、まさかそんな塔だったとは…。(塔を指さしながら)あの丸窓から、毎日あの方の顔が見えるのは、耐えられません」と、露骨に不快感を示している。ただ、この住民は楳図さんの顔も作品も見たことがない。
一方、2人以外の近隣住民は意外なほど冷静で、並びに住む男性は「今朝のテレビで知ったよ」と、なぜかうれしそうな顔で応対した。「非常識といえば非常識だが、法律違反でないなら仕方がない」。30メートルほど離れたマンションの主婦(58)も「(楳図さんは)もともと吉祥寺の住民で、この辺りでもしょっちゅう、あの赤白シャツを見かけます。赤白の家? いいんじゃないですか?」と意に介さない。楳図ハウスの真裏に位置し、庭の西側を紅白壁面でふさがれる女性でさえ、「西日は当たるし、まったく気にしません。(反対運動に)参加するつもりもありません」と他人事のように話す。
建築許可を出した武蔵野市は「建築基準法にも、都の景観条例にも抵触しません。デザイン問題は、一定数の住民合意で地区計画か建築協定を締結するしかありませんね」と、情勢は完全に楳図さん有利だ。
建築を請け負った住友林業関係者も「『やめたほうが良さそうですよ』くらいは進言するが、施工主が『どうしても』といえば依頼通り設計するだけ」と、ごもっともな営業姿勢を見せる。
これに対し、仮処分申請を行った弁護士は「景観法や条例で規制されていなければ何をやってもよいのか。社会人として、他人がイヤがっていることをどうしてもするのか。司直に判断を委ねます」と全面対決の構えを崩さない。
仕掛け人の楳図さんは現在、現場から徒歩5分ほどのマンションに住んでいるが、この件に関しては「ノーコメント」。ただし、本人に近い関係者によると、「芸術家としての表現のひとつ。イメージ通りに完成して、初めて完結するから、デザインは変えられない」と話しているという。
【関連記事】
ZAKZAK 2007/08/03