 息のあった演技をみせる役所(左)と今井=東京・調布の日活撮影所(クリックで拡大) |
秋元康氏の小説を映画化した話題作「象の背中」(10月27日公開、井坂聡監督)で、余命半年の主役を演じる役所広司(51)と、20年ぶりの映画出演となる歌手、今井美樹(44)。クランクアップ直前の緊迫した撮影現場をルポした。
東京都調布市の撮影スタジオ。役所が演じる主人公・藤山幸広がホスピスで家族と心を通わす印象的なシーンが撮影されていた。
スタジオに作られたホスピスの部屋のセット。テラスのベンチで目を閉じている幸広。頬はこけ、やせた首筋が痛々しい。そこに今井演じる妻、美和子が鼻歌を歌いながら現れ、毛布をかける。
目を覚ます幸広。
「ごめん、起こしちゃった?」
「…あぁ、いや」。
そこで響き渡る監督の「カット!」、「はいOK!」。
息が合った2人の演技に撮り直しはほとんどない。それにしても鬼気迫る役所の表情。
「末期がんに侵された男の姿を全身で演じるために10キロ体重を減らした。でもそれが当たり前の役作りというから…」と撮影スタッフ。
 「家庭を守る女性の気持ちが分かった」という今井=東京・調布の日活撮影所(クリックで拡大) |
今井も鼻歌のトーンについて自ら監督に確認する入れ込みようで、映画は20年ぶりというブランクを感じさせない。
息もぴったりの2人。それもそのはず。かねて今井の大ファンという役所は、「撮影が終わるまではCDを聴くのを封印してますから」と言えば、今井は「私も父を亡くしていてこの映画の重さを受け止められないかもと思っていたら、役所さんが私の緊張をスーッと解除してくれた」と揺るがぬ信頼感を打ち明けた。
今井は私生活では夫、布袋寅泰(45)との間に長女がいる。「家に帰ると現実が待っています。ただ彼女(娘)は歌を歌っている私は理解できても、今は『何のお仕事なの?』っていう感じで、『今はお仕事で違うパパがいるのよ』って話しているんです」と笑わせた。
家庭と育児の両立をこなしているだけに、仕事に生きてきた幸広の心情の方が理解しやすかったというが、美和子を演じたことで撮影で家庭を守る女性の気持ちも分かったのが「大きい発見」という今井。
「一番大事な人は私が守っていこうという覚悟を感じています。この作品に出合えてよかった」と言い切った。
役所は、「余命半年の間、父親として家族に何かを残したい。そう思いながら取り組んでいます」と力をこめた。
★役所広司10キロ減量、ダイエットロケ弁も登場
10キロ減量で撮影に臨んだ役所。体を気遣い深夜におよぶ撮影はなかったが、「晴れてほしいときは晴れ、雨のシーンでは本当に雨と、こんなにスムーズなのは珍しかった」と撮影スタッフ。
役所にあやかってか、撮影中にブームだったのがダイエット。約60人に配られるロケ弁のうち15人分はカロリー控えめの「ダイエットロケ弁」が準備された。「“メタボ”が気になる男性に人気でした」(スタッフ)。
★原作は秋元康氏
『象の背中』…ヒットメーカー秋元康氏による初の長編小説。2005年1月から6月まで、産経新聞に連載された。末期の肺がんで余命半年と宣告された48歳の中堅不動産会社部長・藤山幸広は延命治療を拒否。死に直面する中、これまでの人生で出会った人に自分なりの別れを告げながら、家族との絆を強めていく。
連載中から幸広が真正面から向き合った「生と死」をめぐり、各方面で話題となった。扶桑社刊。
ZAKZAK 2007/08/23