幕末、アメリカと通商条約を締結した老中・佐倉藩主の堀田正睦。その正睦を支えた義母、謙映院幾千子(けんえいいんきちこ)の数奇な生涯を描いた書下ろしの力作。
幾千子は松江藩主で茶人として有名な松平冶郷(不眛)の一人娘として佐倉藩の前藩主正愛に嫁いだが、夫は早世、21歳で5歳年下の正睦の義母としての日々を送る。初めは正睦をうとんじた幾千子だが、次第に情が深まり、開国派としての活躍を支えるようになる。
灰に埋めた炭火を意味する「埋火」は幾千子が残した句から取ったものだが、ついに子供もできなかった自らと、内に秘めた正睦への矛盾した思いもこめているようだ。
新人だが、史実をしっかり踏まえた着実な筆で井伊直弼に利用される正睦の苦衷、幾千子の女としての自己撞着などを巧みに描いている。(秋本喜久子著、新人物往来社、1995円)
ZAKZAK 2007/09/22