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全従業員解雇、営業停止…あの出版社「民事再生」の道

出版社アスコム再生記(上)

 今年2月に全従業員解雇、営業停止となった出版社のアスコムが再生の道を歩んでいる。破産の危機を乗り越え、3月に民事再生法の適用を申請。7月に再生計画認可にこぎ着け、新刊の出版も再開された。アスコムに残った社員7人と再生を支援した人々の苦闘を追う。

 「残念ながら営業停止になります」

 2月20日夜。東京・麹町にあったアスコム本社。社長が約40人の社員を集め、全社員の解雇を告げた。

 管理部門の社員から「解雇通知」が手渡され、社に預けてあった年金手帳が戻された。そして失業保険の受け取り方についてのレクチャー。25日に支払われるはずだった給料は未払いになった。営業停止前から社内に不穏な空気は広がっていた。同社が外注したライターやカメラマン、デザイナーから「今月の支払いがまだ入っていない」との問い合わせが相次いでいた。

 しかし、大半の社員は幹部から『会社は大丈夫』と聞いていたので、突然の解雇はやはり驚きだった。

 当時、執行役員で編集長の高橋克佳(48)にとってアスコムは5社目の勤務先。30代前半で店頭公開までしていた出版社の倒産を経験している。

 「そのときも未払いの問い合わせが増えていた。経理や管理部門で社員のひそひそ話が増え、会社を辞める人も」と振り返る。

 高橋はNHKの『ためしてガッテン』『英語でしゃべらナイト』を雑誌にしたり、松山千春責任編集の『月刊松山』、田原総一朗責任編集の『オフレコ!』など数々のヒット作を生み出したやり手編集者。

 事業停止後、アスコムは破産手続きの準備に入っていた。「売れる本を作ってきた自信はあった」という高橋は、部下の編集者と5人で新会社を立ち上げ、独立することを考えていた。

 そこで頼ったのがセントラル総合研究所代表の八木宏之(49)だった。八木は中小企業を対象とした事業再生のプロ中のプロで、「日本一のノウハウがある」と高橋はいう。50万部を超すベストセラーとなった『借りたカネは返すな!』シリーズの著者としても知られる。その編集を手掛けたのが高橋だった。

 八木は東京・神田にあるセントラル総研のオフィスの一室を提供。マスコミの取材攻勢から距離を置き、じっくり今後の方策を練る“砦”だった。そこから高橋らは債権者へ説明に回った。

 「民再(民事再生)をかけられるのに、なぜやらないの?」−。新会社設立で動いていた高橋らに、八木は問いかけた。

 破産手続きの場合、アスコムから出ていた五百数十点の書籍は事実上絶版となってしまうが、民事再生なら販売を継続できる。

 出版社が経営破綻した場合、再生がうまくゆかず、破産するケースが多いというが、八木は「売れる本を作った社員が残っている。早めに手を打てば道が開ける」と勝算があった。過去に出版社の民事再生を手掛けたノウハウもあった。

 八木は2月17日にへんとう腺の手術を受け、声がほとんど出ない状態のなか、鎮痛剤を飲み、ホワイトボードを使って民事再生のメリットを説いた。高橋らも民事再生で意見が一致。八木は以前の大株主からアスコム株を買い取ってオーナーとなり、準備は整った。

 3月10日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。(敬称略、肩書は当時)

 ■経緯 中堅出版社のアスコムは1996年8月にIT関連企業、アスキーの一般書籍編集部門として設立。2002年にアスキー・コミュニケーションズとして独立、03年に現社名に変更した。ビジネス本、有名人の責任編集本がヒットしたが、今年2月20日に事業を停止し、全社員解雇に。社員の一部が会社存続に向けて動き、3月10日、負債総額約15億6000万円で東京地裁に民事再生法の適用を申請。スポンサー企業を得て7月29日に同地裁が再生計画認可決定、8月26日に確定した。

ZAKZAK 2008/09/08

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