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人間はモノじゃない!! 派遣出身の異色の歌手誕生

その名も叉葉賢(または・けん)

 未曾有の金融危機で派遣労働者の解雇が社会問題となるなか、派遣出身の異色の歌手が誕生した。絶望的な歌詞と退廃的なメロディーの『また派遣』を歌う、その名も叉葉賢(または・けん)さん(39)。派遣労働で汗を流すかたわら、歌手デビューを果たした叉葉さんは「人間はモノじゃない」と訴え、“派遣バンド”の設立を目指している。

 「♪また、はーけん。またはーけん。きょうも組み立て流れ作業」「♪配当せびる外資の餌食 きょうからもまたはーけん」−。叉葉さんは今月4日、東京・日比谷公園で行われた「派遣法の抜本改正をめざす日比谷野音集会」で初めてステージに立った。ロシア民謡「ボルガの舟歌」に合わせて絶望的な現実を描いた歌詞を歌い上げると、約2000人の派遣労働者らから拍手喝采を浴びた。

 群馬県館林市出身。実家の電気設備業を手伝っていたが、一人暮らしをするため約10年前、医薬品配送の正社員となった。が、仕事になじむことができず、2年で退職。その後は群馬県内の工場でアルバイトや派遣で勤務し、「これまでに経験した職種は2ケタにのぼる」という。

 現在も派遣で同県内にある洗剤製造工場の検品作業に就いている。厚生労働省の調査では、来年3月までに期間満了か契約途中で契約解除される労働者は約3万人。うち派遣労働者は約2万人と推計される。叉葉さんはいまのところ「派遣切りの影響はない」というが、「正社員登用の話もまったくない」。

 派遣労働では、昼夜2交代で働いた日数分の給与しか出ない。手取りは約20万円あるが、家賃4万円や自家用車のガソリン代、生活費を引くと手元に残る額はわずか。取材当日も交通費を節約するため、高崎から新幹線を使わず、バスで東京にやって来てくれた。

 叉葉さんは、もともとドラムをたたいていたが、今年春、歌手を目指して芸能プロのオーディションを受けた。

 「すごいのがいる」と、芸能プロ幹部から叉葉さんを紹介された音楽プロデューサーの坂本圭二郎さんは「彼と出会ったとき、強烈な個性に思わずのけぞってしまった。身の上話を聞き、彼と同じ境遇で頑張っている人に応援のメッセージを送ることができれば、と思った」と語る。作業着にタオル姿という“素”のままの叉葉さんを押し出していく方針も即断したという。

 叉葉さんは「正社員になることと、バンド活動を両立させたい。きつい仕事ほど仲間意識は強い。ぜひ派遣労働者のメンバーを見つけたい」と夢を語るが、まずは当面の生活が第一。「年末年始ぐらいは実家でのんびりしたいところですが、休んだ分は給料が出ない。来年の正月は熱海のホテルで皿洗いです」

ZAKZAK 2008/12/22

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