人気作家の伊坂幸太郎さん(37、写真)が、自作の「ゴールデンスランバー」(新潮社)について、15日に選考会が行われる直木賞(日本文学振興会主催)の選考対象となることを辞退していたことが8日までに分かった。伊坂さんは受賞によって周囲が騒がしくなるのを敬遠し、「静かになりたい」と辞退の理由を語った。
【異例の予選前接触】
伊坂さんは8日、夕刊フジの取材に、「僕の方から言えることはあまりありません。ただ、他の賞と比べて(直木賞は)注目度が違う。今は精神的にまいってしまってもいるので、執筆に専念するため静かになりたいという思いが強かった」と話した。
辞退の意向を伝えたのは、候補作を決める予備選考が行われる前の4月。日本文学振興会が、賞の運営にかかわる文芸春秋の担当者を通じて接触したところ、伊坂さんは「執筆活動に専念したい」と予選の対象から外れることを希望したという。
伊坂さんは言葉少なだったが、直木賞については夕刊フジが5月に行ったインタビューで、「本当に影響が大きいので、(周囲の騒ぎで)小説を書く時間が減ってしまう。有名になることに恐怖があり、無邪気に候補になることが楽しいとはいえない賞だ」と語っていた。
「(受賞で)本を手に取る人たちにはあまり関心がなく、ぼくの本を本当に喜ぶ人には逆に届かなくなるような気がする」とも。有名になって騒がれることには、「精神的にも摩耗してしまうし、そういうのが嫌だから家でコソコソやる仕事を始めたこともある」と話していた。
今期直木賞は候補6作が既に発表されているが、最大の話題作が不在の形で進められることになった。同会は通常、予備選考で6作前後の候補作を決めた段階で各候補者に連絡、候補作となることを受諾するかどうかを聞く。今回のような予選前での接触は異例だという。
直木賞をめぐっては2003年、横山秀夫氏の「半落ち」が候補作となるも、選考委員から「落ちに欠陥がある」と指摘されて落選。読者まで侮辱された−と受け取った横山氏は、同賞との“決別宣言”をして話題となった。伊坂さんは「ゴールデンスランバー」で、直木賞を過去に唯一辞退した山本周五郎にちなんだ「山本周五郎賞」、全国各地の現役書店員による投票に基づいて選ばれる「本屋大賞」を受賞している。
伊坂さんは「死神の精度」などで直木賞候補に5度選ばれた。現在最も注目されている中堅作家の1人で、「ゴールデンスランバー」は、首相暗殺犯のぬれぎぬを着せられた男が仙台の町を逃げ回る長編。昨冬出版され、発行は約25万部。
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ZAKZAK 2008/07/08