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見た人だけが得をする…「小三治」の世界に3年半密着

21日から公開

 話題のドキュメンタリー映画「小三治」が、21日から公開される。噺家・柳家小三治(69)を3年半にわたって追いかけ、その喜怒哀楽を104分に凝縮。素晴らしい作品に仕上がった。ただ、当の小三治は「口出ししたくなるから、おれは見たくない」とかたくななまでのスタイルを貫き通す。高座同様に、見た人だけが得をする−ということか。

 百聞は一見にしかず。小三治のナマの高座に触れたことがある人なら、その魅力は十分にわかっていただけるはずだ。観客が思わず、身を乗り出し、どれどれと首を伸ばして、のぞき込みたくなるような世界がフッと目前に出現する。ただ、悲しいことに、その雰囲気はDVDなどでは感じることができない。だから、独演会のチケットが“超”がつくプレミアとなる。

 ところが、同じ映像でも、今作品は完璧なまでの姿をとらえた。小三治ワールドの奥行きの素晴らしさや、空気までも漂ってくる。

【スタイル貫き、ほとんど宣伝なしでもヒットの気配】

 「映画を撮るとき、最も注意したのがじゃまにならないように、でした。それから、師匠があまり好きじゃない、とおっしゃるので、劇中に流れるBGMは師匠が歌う1曲。ナレーションも最小限に抑えてあります。師匠の言葉で作品を構成しました」と安西志麻プロデューサーは話してくれた。

 それだけではない。宣伝もまた、ホームページの告知と都内の定席にチラシを置く程度。100億円も宣伝費を使ったと公表する作品もあるというのに、何という大胆な手法なのか。

 安西プロデューサーは「考えてやったわけではありません。師匠が気に入らない、といわれることは、すべてやりません。その結果がこうなりました」と苦笑。極めつきは主演であるはずの小三治自身が作品を見ない、ことだろう。映画界の常識を覆す数々の出来事には驚かされるばかりだが、口コミで噂が広がり、単館上映ながら、幕が上がる前からヒットの気配が漂ってきた。

 昨年はNHKの人気番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。大いにファンを拡大させ、マニアと呼ばれる人までを歓喜させた。

 それでも、当人は「名誉とか、肩書とは無縁」のスタイルを貫いている。これがまたいい。そうでなければ、小三治ではなくなってしまう。

 圧巻は、上野・鈴本演芸場の独演会で撮影された演目「鰍沢(かじかざわ)」。この日の撮影に偶然、遭遇したがなぜ鰍沢を演じたのかが謎だった。その答えは映画の中にあった。映画「小三治」は極上のミステリーのようにも感じられる。記録にも記憶にも残る噺家は、公開初日の舞台あいさつだけを行い、一切の取材を受けない。

■やなぎや・こさんじ 1939年12月17日生まれ。東京・新宿区出身。落語協会理事。59年、5代目柳家小さんに入門。63年、二つ目に昇進、さん治に改名。69年、17人抜きの抜擢で真打昇進。10代目柳家小三治を襲名。

■「小三治」(康宇政監督)は、21日から東京・ポレポレ東中野(21日に小三治、康監督の舞台あいさつ)、神保町シアター▽28日横浜にぎわい座▽3月14日から横浜・黄金町のシネマ・ジャック&ベティ▽4月11日から名古屋シネマスコーレなどで上映。公式HP(http://cinema−kosanji.com/)。

ZAKZAK 2009/02/20

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