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富の最適化で豊に…小さな無駄で大きな無駄を消す

西成活裕著「無駄学」

西成活裕氏
西成活裕氏

 「万物は渋滞する」の名セリフで『渋滞学』という新分野を切り開いた数学者の西成活裕さんが今度は渋滞の裏に潜む無駄を徹底検証した『無駄学』(新潮選書)を出版した。いい無駄・悪い無駄のコントロールが成熟した人と社会を実現させるという。

 −−渋滞と無駄は親戚関係ですね

 「満員電車、倉庫の整理から仕事の手順、はたまた人材の活かし方に至るまで渋滞の陰に無駄あり、ですからね。あらゆる無駄をなくそうとこの度『日本国際ムダどり学会』の会長を引き受けました。学内でも『東大無駄取り懇談会』が開かれ、隗より始めよで講師を務めました」

 −−数学者が考える無駄とは?

 「帰納法的、演繹法的手法で−つまり、ちゃんと個別の理由が説明できて、普遍性もあるといった視点で考えたら判断基準は2つ、目的と期間でした。簡単なところでは、賞味期限内の食べ物を捨てるのは明らかに無駄。いつか役に立つだろうと思い捨てられない資料は、『使う』という目的は満たすかもしれないけど、期間を『半永久的』に設定している限り捨てられない。『1年後』に設定すればたいていのものが捨てられます。では異性からの誕生日のプレゼントは?」

 −−ムムム

 「贈る側は愛の告白という目的で渡しても、もらう側に気がなければ、せっかくのプレゼントは無駄になるのです。立場が違うと無駄の定義は変わりますが、これも広い意味では目的のズレといえるでしょう」

 −−無駄をなくすには

 「何が無駄かを決める人たちが目的と期間という“物差し”を共通にするところから始めなければ。無駄どりの基本は、なくてもいい物、しなくてもいい言動を省くということなのです」

 −−世界同時不況の今、財政や組織のスリム化は人類共通の悲願です

 「世界の存続という大きなテーマに視点を移せば、目的の実現はなるべく長期に据える。3カ月で成果が出なければ計画そのものが無駄というふうに考えない。かつだれかが1人勝ちしないこと。そして勝ち組は、利益の一部を1回だけ寄付金などの形で他人に譲るんです、つまり無駄をあえてする。これを複数の勝ち組が順繰りにやっていくと、社会全体では富の最適化が実現し、社会は豊かになります」

 −−定額給付金は寄付金に回すとか

 「利他的であることが、小さな無駄を介して大きな無駄を消し去る力になる。ポスト資本主義の気配、しませんか」

 −−いい無駄ですね

 「ボ〜ッとする時間、回り道、これはリラクセーションを生みます。また本のページに余白があるのは、読みやすさと美しさから。こうした無駄の効用が期待できるものは一見無駄と見えても無駄じゃありませんね」

 ■「渋滞学」(新潮選書、1050円)ミクロからマクロまでさまざまなスケールで存在する「無駄」の本質を科学的にあぶり出し、無駄どりの手法を伝授。麻生総理も興味を持ったという経営・経済活動のヒントともなる1冊。

 ■にしなり・かつひろ 1967年、東京生まれ。東大院工学系研究科航空宇宙工学専攻准教授。専門は数理物理学・渋滞学。著書『渋滞学』(新潮選書)で講談社数学出版賞と日経BP・Biz Tech図書賞。

ZAKZAK 2009/03/27

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