映画復帰、元組長に単独インタビュー
安藤昇、「実録・安藤組外伝 餓狼の掟」

安藤昇  往年のヤクザ映画で活躍した俳優の安藤昇=写真=が久しぶりにスクリーンに登場。4月公開の「実録・安藤組外伝 餓狼の掟」(梶間俊一監督)で、75歳とは思えない精悍な演技を披露している。かつての子分だった伝説の“セイガクヤクザ”花形敬を主人公にした物語。「ヤツ(花形)は俺にとって別格な存在だった」と振り返る安藤に、映画ライターの内尾哲明氏が独占インタビューした。


 セイガクヤクザとは、敗戦直後に暴れ回った不良学生の愚連隊のこと。安藤は法政大を中退後、東京・渋谷を根城にした安藤組を結成し、数々の修羅場をくぐり抜けた。昭和33年には発砲事件(横井事件)に関与した罪で懲役8年の実刑を受けて入獄。出所後、子分たちの相次ぐ死を聞き組を解散した。

 「あの頃はとにかくザワザワ、バタバタした時代だった。よくもまあ、生き延びてきたと思うよ。ムチャクチャやってきたが、後悔はしていない」

 その後、安藤は自身の半生を映画俳優として演じてみせた。デビュー作「血と掟」に始まり、「やくざの掟」「男の顔は履歴書」「懲役十八年」などヒット作を連打。が、54年「総長の首」を最後に俳優業に幕を引き、14年前の「極道渡世の素敵な面々」にゲスト出演以来、今回が久々のスクリーン復帰に。

 「出たいとは思わなかったが、俺の組の花形の話だろ。是非にといわれりゃ、しようがないわな。やっぱり撮影現場はいいな。大勢でワイワイやりながらモノを作るのって楽しいよ」

 「餓狼の掟」は、安藤組一の暴れ者、花形敬の33年の短い人生を、安藤自身が回想するかたちでストーリーが展開していく。実は14年前に同じ梶間監督で「疵」のタイトルで花形の生涯を映画化していた。主演は陣内孝則。今回は哀川翔が扮し、「実録タッチで、仏フィルム・ノワールのようなネオ(新)暗黒映画」(梶間監督)を狙っている。

 「哀川クンが思う花形像でやってくれればいい。彼は本当に真面目な役者だから、当時の資料を読み込んで役作りしている。荒ぶれた後ろ姿なんか、花形を彷彿とさせるよ」

 実際の花形敬はどんな人物だったのか。

 「180センチのタッパ(身長)からは想像もつかないほど繊細な男だった。ヤツがムショ(刑務所)から送ってきた手紙には、細かい綺麗な文字がビッシリと書き込んであった。文章も正確で、テレもせずに自分の心情を書いてくるんだよ。あんな大柄で大ざっぱに見えるヤツがね。ビックリしたよ。内面と外面がまったく違うんだから」

 「俺も花形も男臭く生きたし、体の中に獣、狼を飼っていたんだと思う。ヤツが今生きていたらだって?  俺と4つ違いだから71か。やっぱり昔のように一緒に女遊びでもしたいよな(笑)」

 現在は渋谷と赤坂に事務所を構え、執筆活動のほか映画、ビデオなどの企画プロデュース。年内には安藤組の活動を集大成した大作映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・シブヤ」の製作に入るという。

 あんどう・のぼる 大正15年5月24日生まれ。戦前は予科練を志願、戦後法政大に籍を置くが、中退し、東京・銀座で洋品店を開業。ヤクザに顔を切られたことを機に、昭和27年安藤組を組織し、全盛期には1000人を超える組員を抱えた。39年に組を解散し、翌年映画俳優として再出発。約60本の映画に出演する。

ZAKZAK 2002/02/18