「八月の濡れた砂」などで知られる故・藤田敏八監督の幻のドキュメンタリー映画が34年ぶりに初公開される。1968年製作の「にっぽん零年(ぜろねん)」(製作配給・日活)=写真。内容が当時の社会状況に影響を及ぼすとの理由で“お蔵入り”になっていた。
政治の季節と呼ばれた60年代は多くの若者たちの熱気と興奮の時代でもあった。この作品は、そんな彼らの心の揺れ動く様子をゲリラチックに描き出した。
プロデューサーは当初、藤田繁矢(本名)、河辺和夫、浦山桐郎、斉藤光正の新人4監督の共同演出として企画した。撮影は68年の夏からスタート。新宿にたむろするフーテン、学園紛争に没頭する東大生、訓練に没頭する若き自衛官らの姿を追った。
しかし、時局を憂慮した会社側が突然に製作中止を命令。スタッフ間の意見対立もあり、浦山、斉藤が降板した。が、藤田らは会社に内緒で撮影続行。新宿騒乱事件、翌年の東大安田講堂事件もフィルムに収め、密かに映画を完成させた。
そのため、タイトルは藤田が付け、降板の2監督の名前はクレジットから外された。もちろん公開どころではなく、その後に起きたよど号ハイジャック事件、あさま山荘事件などの影響もあり、フィルムは封印されてしまった。
このところ、「光の雨」「突撃せよ!あさま山荘事件」など60−70年代の事件を扱った映画が話題を呼んでいる。
今回の「にっぽん零年」はこれを受けての上映で、モノクロ、74分の上映。悪条件の中で作られたため、カメラアングルや照明、録音などの問題で見苦しい場面もあるが、その分、当時の混乱した状況や若者たちの狂信的な行動がじかに伝わり、迫力ある映像となっている。30数年前の「にっぽん」の姿が確かにそこにある。
6日に東京・渋谷のユーロスペースで公開、順次全国上映される。
ZAKZAK 2002/07/01